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KKP#8「うるう」感想②森の中の王子様

※「うるう」感想①一つ余るのヨイチ 四年に一度のヨイチの続きです。
 未見の方はご注意ください。








ある日ヨイチは久しぶりに人間に出会います。
ウサギ用の罠にはまった小学生マジル(8歳)はクラスのリーダー的存在。
ヨイチとは違った意味での余り一です。
マジルはみんなの輪に交じることができるからマジルなんでしょうか。

ヨイチから見てマジルは余っているのでなくて選ばれた存在、マジルのクラスメイトから見ると一人だけ違う特別な存在。余り一とその他大勢の境界線上に居る存在が、ヨイチの孤独を救うことになります。

童話に出てくる孤独な姫君はただ一心に救済者の訪れを願うのみですが、塔の中のお姫様ならぬ森の中の王子ヨイチの場合は、孤独から救われたい、でも救われなくてもいいかもしれないと思っています。友達になれば現実と向き合わなければなりませんので。

森の中に居れば孤独を感じるでしょうが、傷付くことはありません。
彼はもう孤独に慣れ切っています。
どうせ僕は要らない人間なんだ。だから一人で生きるよ!一人がいいんだ!!
というようなひねくれた気持ちもあったのでしょう。
なので、頻繁に遊びに来ては友達になろうというマジルの誘いを断り続けます。


マジルが急に森に遊びに来なくなりました。
ヨイチはもう来ないのではないかと心配になります。
しかし、マジルは再びやって来ました。

大喜びするヨイチがめちゃくちゃ可愛いです。このツンデレ野郎め!!!
マジルからプレゼント(手書きの「待ちぼうけ」の楽譜)をもらい、嬉しくなったヨイチがマジルを野菜畑へ案内するシーンはこの作品の中で一番美しいシーンですね。

やっとマジルに心を開き始めたヨイチですが、二人に危機が訪れます。
マジルが森に遊びに行っていることがクラスメイト達にばれてしまったのです。
ヨイチはマジルと力を合わせておばけのうるうに変装し、森にやってきた彼等を追い返しました。

その結果、ヨイチは大人達の手から逃れるため、森の奥に移動しなくてはならなくなりました。そして、マジルと友達になるべきか、ならざるべきかで揺れていた彼の心は、マジルと別れる方向に固まってしまいます。

ヨイチはグランダールボにマジルとは付き合うなと言われた時にも別れなくてはと思っていたでしょうが、まだ迷いがあったように感じられました。彼はこの事件で、自分が外側の社会の人間にとっての"うるう"なのだとはっきりと自覚してしまったのだと思います。
つまり、マジルのように社会に溶け込むことができず、世間の目から隠れて生きている異質な存在なのだと。

これ以上マジルがヨイチと関わろうとすれば、大人に激しく怒られ止められるでしょうし、クラスメイト達は彼がうるうと何らかの関係があるのではと怪しみ始め、彼をいじめるか遠ざけるかするようになるでしょう。

今までクラスの人気者だった人(選ばれた存在)が、ある日突然いじめられる立場(余り一)に変わるというのは、子供の社会ではよくあることです。

ヨイチは彼に自分の正体を明かします。
自分が四年に一度しか年を取らない体質だと。
好きになった人達が自分より先に年老いて死んでいくのを何回も見てきた。
そんな経験をまたするのは辛い。
だから友達は作らない。
マジルは必死にすがりつきますが、ヨイチは自分はお化けなんだと言い、強引に追い払ってしまいました。
マジルが去って行った後のヨイチの顔がただひたすらに悲しかったです。

またひとりぼっちになってしまったヨイチは再びいつも通りの生活を始めます。
ただ月日だけが過ぎていきます。

どこからともなくチェロの音色が…。
ヨイチはチェロの呼び掛けに応えるように「待ちぼうけ」を歌い始めます。

チェロを弾いていたのはマジルでした。
あれから40年経ち、音楽家になったマジルがヨイチのことを覚えていて、会いに来てくれたのです。ヨイチと同じ48歳となって。
ヨイチが自分の存在を知らせるように熱唱する姿に圧倒されました。
マジルに向かって両手を広げるヨイチ。
タビュレーティングマシンに友達の数を表す1が示され、暗転。

再会し、マジルと友達になり、余り一でなくなったのはよいのですが、大変なのはその後でしょうね。人間関係って始めるのより持続していくのが大変ですから。
マジルも若い頃ならともかく48歳であれば仕事だの家庭だの色々しがらみもあるでしょう。
同じ48歳になっても、すぐにマジルがヨイチの歳を追い越してしまいます。
でも、友達になると決めたからにはしっかりやれよ、と思います。

まだまだ私が気付かないだけで隠されていることがある気がします。
賢太郎さんのことですから、大千秋楽の2月29日の公演で何か企んでいそうな気もします。
これから回を重ねていく中で、この作品がどうなっていくか楽しみでなりません。


…長い文章ですみません。一応これで終わりですが、また何か思いついたら書くかもしれません。