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ライブポツネンinヨーロッパ

やっと観られた。
録画しておいた小林賢太郎テレビ ライブポツネンinヨーロッパ(・∀・)!

これまでのポツネンシリーズやKKPは、良くも悪くもテーマが作品からはみ出していました。はみ出した部分が時には観客を突き刺す刺になっていることもありました。そういった部分に強く惹きつけられる人も居たし、逆に嫌悪感を抱く人も居たと思います。しかし、今回の「P」は、テーマを作品にぽたりぽたりと滴下して綺麗に拡散させたという印象。あんまりいつものポツネンらしさはなかったかなあ。全体的に静かな印象ですが、目を凝らすと色んな対立構造がぐるぐる錯綜しているのが見えて、そこが安部公房っぽくて個人的には好みでした(安部公房は確かフランスで賞もらってましたよね)。

これまで自分がやってきた言葉を使わないコントの理論を総動員して作っていると賢太郎さんは話していましたが、「P」はまさにそんな感じ。自分の持っている言葉以外の武器をありったけ集め、それらを磨き上げ、洗練させて使っていました。

賢太郎さんの作品にはもともと記号的なところがありますが、今回のは更に記号的な感じがしました。例えば男子トイレと女子トイレのマーク。実際には赤い服を着る男性も居るし、ズボンをはく女性も居る。しかし、デフォルメされたあれを見せられれば、ほとんどの国の人は直感的にどちらが男子用でどちらが女子用か分かるでしょう。そういう言葉が通じなくても見れば分かること(ドアとか、漫画とか)。それから、水が心地いいとか、うるさいとか、不味いとかいう、人類であれば誰もが共有できる感覚を探りながら形にしていったのではないかと私は思いました。

ラーメンズの名前の由来という説もある枠、「バッハ」で使われたラヴェルの「ボレロ」(これはフランス人へのサービスかな)、賢太郎さんの衣装等、ラーメンズっぽい要素が結構ありました。

木の枠が、「P」では重要な役割を担っています。題名の”P”も、木の枠を組み合わせたデザインで描かれていました。このライブin ポツネンでも、コントやドキュメンタリーの合間にガラス(アクリル板?)を嵌め込んだ木枠を使って小ネタをやっていましたし(屋根の上を人がタッタッタッタッと走って行くのがお気に入り。賢太郎さんの表情が可愛い。パリの街をしゃなりしゃなりと歩いた後、枠をくるりと反転させ、イラッシャイマセと言うのもいい。)。

では、順番に語っていきます。

● 日本検定
不思議の国のニポン+日本の形+ポツネンのタングラム÷3って感じ。
ページを左から右にめくっていますね。
賢太郎さん、カニ好きだなあ。

● naeo
反復しながら徐々にクレシェンドしていく「ボレロ」が効果的に使われています。
言葉ではなく、ん・あ・え・おという音と身体と顔で表現していますが、伝わるものですね。その分、演技がいつもよりオーバーだったけど。

上手(かみて)に居る人、塀の向こうに居る人とのやりとりもあります。ぶたれているのを見て、「study」の万引き犯を思い出しました。地面に落ちている丸いものを最後に食べますが、あれは何なんでしょうか。持っていると人に羨ましがられるもの、こっそり独り占めして食べてしまいたくなるものなんですよね。
石、トリュフ、チョコレート、シュークリーム、団子、饅頭…。
いろいろ考えたのですが、私は後半の「Diver」に出てくる黒い球かなと思いました。
ていうか、落ちているものを拾って食べちゃダメだろ…。

公演の2ヶ月前の賢太郎さん。
パリの石段にちょこんと腰掛け、一言。
「なんてステキなとこなんだ。」
何じゃその台詞(・д・)
わざとらしい…。
レストランらしき所でNHKの人と喋っていた時の方が素に近いのかな。自分の好きなことについて語り始めると饒舌になるのが仁さんと一緒ですね。
「これ、大滑りしたら面白いですね。面白くねえよ!」
というノリツッコミ。ああ、やっぱ不安だったんだね…。

● シーッ(タイトル分からん)
これが一番ポツネンぽいです。ツンデレですね。
部屋の中で静かに本を読む男。しかし、あちこちから騒音が聞こえてくる。
床が軋む音、エンジンの音、ドラムの音、電話のベル、
男は、窓を開け、ドアを開き、騒音の元を突き止め、シーッと言う。そのためだけにえらい苦労をしている。
瞳の虹彩による生体認証、レーザートラップ、スパイ映画みたいなこともやっている(ここ好き)。あるドアを開け、外に出た瞬間は喜んでいるのに、やがて何かに怯えてドアを閉める。あのドアの向こうには何が居るのかな。ジョン?獏?

枠で表された窓やドアは、空気や人などの行き来、入れ替わりを可能にするものです。客席に向かって開いている窓から男が客席を覗き込む瞬間、見られる側と見る側とが逆転するのが面白かったです。

● 漫画(タイトル分からん)
記号の芸術、日本が誇る世界共通語である漫画の表現を使った作品。肉体的には一番きつそう。
漫画では枠線が使われますので、やはりこの作品でも「枠」が使われていると言えます。
古典的な漫画の記号と今風の記号が同じ作品の中で同居しています。ドラゴンボールスーパーサイヤ人かめはめ波の表現も出てきます(ドラゴンボールはフランスでも人気があったはず)。音符を使ってドラムを叩く男を窓から見つめ、シーッと言う男。この視点の切り替え、主体と客体の入れ替わりが凄く鮮やかでいいです。前のコントとの繋がりが感じられるとなんだか嬉しいしね。

賢太郎さんが大阪の水族館で子供のように嬉しそうにしているのを観て、ニヤニヤしてしまいました。Diverの文字が丸っこくて、泡も描いてあって可愛いなあ。

● Diver
とにかく美しい。いつまでもボーッと眺めていたい。音楽がまた、いいんだな。仄暗い水の中をゆらゆらぷかぷか漂うような感じがとても合っています。観ていると不安と安心とがごちゃ混ぜになったものが胸に湧き上がってきますが、終わると同時にすっと消えていきます。

白い手によって壁に描かれた様々な世界を男は旅します。
空は水に、水は空に。綱渡りの絵とか、引き込まれますね。上手いなあ。
「The SPOT」の王様に教えてもらったのですが、アジアの東の端っこの国の国魚は鯉でしたね。水の揺らぎって、なんであんなに綺麗で心地いいんだろう。

黒い球は曲がりくねった管の中に投げ込まれ、管を通過します。管が人間の腸っぽかった。白い手と共同作業で絵を描き始めた男は、自分が主導権を握ろうとします。描かれる側から描く側に。ここでも主体と客体の入れ替わりがあります。
壁に描いたドアを開け、手を振る男。
楽しい夢よ、さようなら。タコの触手に引っ張られて退場。
自分の思い通りのこと(妄想)が実現化された世界に居続けることは、描く側になった以上できない。それは描くのを辞めることだからってことかな。騒音を止めるために動き回っていた男の居た世界とは逆に、「Diver」ではドアの向こうが現実なのでしょう。
こじつけかもしれないけど。

公演終了直後の「これがコントだよ。」(あれじゃ料理を口に入れた瞬間、コメントを言うグルメレポーターみたいだ。)よりも、賢太郎さんが思いを噛み締めながらパリの夜景を見つめているのが私は印象に残りました。

「次もっと面白いもの作ってくるから待っててね。」
ええ、待ってますとも。
小林賢太郎テレビ4の予告。朝ドラ風だったり、にほんごであそぼだったり、けん玉使って何かやってたり、賢太郎さんの高い鼻がますます高くなってたり、えらいことになってましたね。これは見逃せません。