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まとめ✽図書館的人生㊤

イキウメの「まとめ✽図書館的人生㊤」を観てきました。
以前観に行ったイキウメの「ミッション」がとても面白かったし、先月BSプレミアムで放送された「太陽」と「暗いところからやってくる」も良かったので、イキウメの舞台には注目しているのです。

私にとって、図書館は大好きな場所の一つ。古今東西のあらゆる世界にリンクできる無限の海。一日中居ても飽きない。いっそ図書館に住みたい。そんな場所です。図書館が舞台の芝居をイキウメがやってくれるとなれば、こりゃあ観るしかないでしょう!というわけで、約一時間電車に揺られて北九州市の西小倉へ到着しました。

年末の商業施設、及びその周辺は人が多いヽ(´Д`;)ノ昼食を取ろうにも、良さそうな飲食店は皆混んでいて、ウロウロすること30分弱。もうここでいいや、と入った店の醤油ラーメンが不味かったので凹みました_| ̄|○嫌な予感はしていたんだ。1つのテーブルだけならまだしも、4つのテーブルの器が片付けられずに残っていたからね(またそれかよ)。お腹が減っていてもあれだけ不味かったということは、相当な不味さだな。

口直しにコンビニで買ったチョコレートを頬張った後、北九州芸術劇場に入りました。

この作品は6つの短編の断片がシャッフルされてランダムに再生される形式で、それぞれ別の話と繋がっていたり、境目が曖昧になっていたりしています。図書館で手に取った本をパラパラと読んで本棚に戻し、また次の本を取って読み始める感覚に近いかもしれません。

舞台の手前に図書館のテーブルと椅子。中央に本棚が並び、奥にはダンボール箱が壁のように積んであります。図書館の本棚には様々な人々の人生が書籍として収められています。本を読めばお腹は満たされるので飢えることはありませんが、帰りたくても出入り口が何処なのか分かりませんし、受付が何処なのかも分かりません。職員もこの図書館のことをよく知りません。なぜなら、ここを訪れた人が自発的に職員の仕事をしているだけだから。受付の場所を本で読んで知った人が存在することは分かっているけれど、その人は受付へ行ってしまったので、見つけることはほぼ不可能。登場人物の背後で心許なく動く人々は彷徨う魂のよう。男は自分の人生が書かれた本を読み始めます。

■ 青の記憶

病院の中で地震に見舞われた5人。彼等は地震の記憶で繋がっています。現在の職業も一人を除いては地震に関係のある職業です。
無限に広がる廊下とドア。谷山浩子さんの「夢のスープ」のような世界観。
双眼鏡がきっかけで前世の記憶が蘇り、東北弁で話し始める元家族の5人。
双眼鏡の取り合いを始める兄弟三人。それを叱る両親。特に末っ子の子供の演技が凄かったです。大人が思う子供ではなくて、本物の子供のようでした。5人が今居るのは死んで生まれ変わる前の中間地点です。彼等は自分の人生の書かれた本にサインすれば生まれ変われるのにサインしようとしません。やがて彼等は、自分達は死んでいるのではなく、死んでいると錯覚しているだけではないかと考え始めます。始めの看護師とのやり取りのシーンに戻った時に、ハッとさせられました。前世で夫婦だった二人がいい感じになるのも良かった。

■ 輪廻TM

輪廻を体感できるタイムマシーンを作り出した怪しげなホームレスの二人。魂が女で動きが微妙にクネクネしている男は自分の来世がどんなものだか確認します。ああ、めんどくさいんだ、やっぱり…。弥勒菩薩の生まれる時代へ行ったホームレスは…。
車椅子で時空を簡単に超えられる荒唐無稽さがいい。暗転した時はビビりました。

■ ゴッド・セーブ・ザ・クイーン

会社の金を横領したのを同僚の佐久間という男に気づかれ、その同僚を殺害してしまった女、神崎が主人公。彼女は自殺を図りますが、そこに二人組の男が現れ、どうせ死ぬなら魂と身体を回収したいと言います。死ぬ死ぬと騒ぎ、飛び降りようとする女。二人組は彼女が飛び降りるのをやめさせようとあの手この手を尽くします。まあ、どんな正論や感情に訴え掛けるような言葉を投げかけられようと自殺する時は自殺するし、自殺しない時は自殺しないけどなあ…。二人組のシュミレーションによれば、神崎が今の人生をリタイアすれば、来世はコートジボワールのコーヒー農場の息子(ただし、ペナルティで生まれ変わるまでにかなり時間が掛かる)。全うした場合は、なんと女性天皇!だそうです。結局二人組のうちの一人が思いついたアイデアにより、女の魂は佐久間の身体で生きることになります。おお、そう来たかあ!調べていて分かったんですけど、このタイトルってイギリス国歌と同じなんですね。へえー(・o・)

■ 賽の河原で踊りまくる「亡霊」

賽の河原で小石ではなくダンボール箱を積み上げる親不孝者の4人。折角苦労して積み上げても、すぐに鬼に崩されてしまいます。不毛な単純労働。命令に逆らえば鬼から折檻されます。腰痛持ちの鬼は、折檻の時に金棒ではなくゴルフクラブを使っています。
鬼と4人を監督し、ホイッスルを吹く奪衣婆がカッコよかった。奪衣婆に認められれば、本にスタンプを押してもらい、窓口に行くことができるのですが、そこには何の基準もありません。素直にダンボールを積んだ少年。鬼にどんなに崩されても何度でもダンボールを積み直した男。最初は自己中心的だったが、徐々に真剣に仕事をするようになった天動説の女は窓口に進めました。点数稼ぎの男は、奪衣婆に認められることだけを考えて法則や答えを探してばかりで、一向に上がれる気配がありません。鬼に考えるな、感じろと言われても聞く耳を持たない。彼を指導する鬼も、だんだん疲れてくる。とうとう鬼はゴルフクラブで点数稼ぎをしばくのが嫌になって、自分の仕事を降りてしまう。オチは何となく分かっちゃいましたけど、綺麗でした。落語のよう。

■ 東の海の笑わない「帝王」

感情が顔の表情ではなく、股関節が開いたり、手が上下に動いたり、背中が引きつったりという形で身体に出てしまう男。男は妻にそのことを隠しています。床の上で腹ばいになって背中を仰け反らせ、妻に自分の「言葉」を信じてくれと訴える男。それを信じられない妻。本人達は真剣なのでしょうが、傍から見ると可哀相ではあるんだけど物凄く滑稽でした。自分にとっては当たり前のことが周囲には異常なことであり、なかなか分かってもらえないというのは辛いよなあ。夫の体質を理解した妻は、それを受け入れ、彼のことを誰よりも理解しているのは私、と嬉しそうに姉に語るようになります。もっと早く自分の体質を打ち明けていればよかったのにね。

■ いずれ誰もがコソ泥だ、後は野となれ山となれ

万引きのプロの男は、自分の万引きに美学を持っていて、必要なものしか盗らないし、換金目的や遊びの盗みはしません。彼は懸賞で生活している女に同じ美学を感じ、彼女の家に押しかけ、「俺と付き合え」と迫っています。しかし、女は彼を相手にせず、証券マンに想いを寄せています(懸賞と証券って語感が似てるな)。ある日万引き男は、店の商品を棚ごとごっそり盗んで行く平雅を許せず、自分が万引きをできなくなるというリスクを覚悟して、彼を告発します。美学を持っていようといまいと万引きは万引きなわけですが、作者の前川さんは彼等を善悪では裁きません。ただ、彼等なりの生き方、価値観をクールに描いています。証券マンに自分が懸賞だけで生活していることをを打ち明け、思いっきり引かれてしまった懸賞生活の女は、万引きGメン(おそらく店長からスカウトされたんだと思う)になった万引き男にまたまた告白されました。彼は万引きをやめてはいません。彼等の未来はどうなるんだろう。彼等が明るいと思っていれば明るいんだろうか。

図書館で自分の人生の本を読んでいた男は外に出ることにしました。自分の人生の続きを知るために。

図書館で本が開かれる度に、生と死、夢と現実を彷徨う人達。
生まれ変わること、終わりが見えないこと、答えがないことへの不安。
生きていても死んでからも、不確かなことだらけ。生にも死にも意味なんてない。
それでも生きている間はそれを全うする。
そういう意志を作品から感じました。
だから、生と死の匂いが全体に立ち込めていても陰鬱さを感じなかったのでしょう。
6つの物語は閉じられて本棚に収められてしまいましたが、しばらくこの雰囲気に浸っていたいと思わせてくれる作品でした。

多分、前川さんはこの作品で輪廻を描いてはいるけれど、死んだらおしまいだと思っているね。
メメントモリ