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「ロールシャッハ」感想(始まりの前) ①

「ロールシャッハ」の劇中で流れる「AUGUST」。この歌詞に登場する男は、次の朝雨が降ったら「君は僕の身体の一部ではない」と言おうと思っています。
でも本当に言うかは分かりません。おそらく男には葛藤があるでしょうし、次の日雨が降らない可能性もあります。
分岐点の手前で立ち止まっていて、その先にはいく通りもの未来が広がっている。
そういう何かが始まる前の状況を切り取っているような印象を受けました。

「AUGUST」と同じように、「ロールシャッハ」も始まる前の物語。分岐点の手前で長いこと止まっています。開演してから時間がだいぶ経っても、登場人物達は相変わらず些細なことで諍いやじゃれ合いを繰り返しています。自分の問題にばかり気を取られて全く噛み合わないこの四人はこの先一体どうなるのか。作戦は本当に成功するのか。大丈夫かいな、こいつら。そういうことを思いながら舞台を見つめていました。

ここから先はネタバレです。最初から内容を説明していきます。とは言っても、これは私が福岡公演で観た内容なので、他の会場とは若干違うかもしれません。私の記憶も完全ではないし(そっちのほうが問題か)。



お祭りのサーカスのテントの前で腹話術人形のカイタ君を動かし、思いっきり口の動いている腹話術を始める富山。傍らには地図。真面目そうな人が真面目に下手くそな腹話術をしているだけでどうしてこんなに可笑しいのか。
カイタ君の声がツボでした。

開拓隊は島から島へと開拓を続け、とうとう最後に開拓した壁際島にある壁、世界の果ての壁にぶつかった。今回開拓隊はパイオニア号で壁の向こうを新たに開拓することに挑戦する予定。というようなことをお祭りの客に腹話術で説明しています。そこへ無線で連絡が入り、富山は本部に呼び出されます。富山はサーカス見たかったのになあと名残惜しそうにサーカスのテントを見つめた後、本部に向かいます。

開拓の最前線である世界の果ての壁の前には荒地が広がっていて、遠くにはパイオニア号が見えます。

串田が一人座っているところに富山がやって来て話をしていると、壺井が枯葉をバサバサと撒き散らしながら登場。登場した瞬間にお客さん大爆笑でした。久ヶ沢さんはおいしいところを持ってくなあ。
その後、物陰に隠れていた天森がひょっこり姿を現します。
遅れるのが心配でお母さんの車で送ってもらい、3時間前には到着していました。

開拓隊指揮官である富山から、今回の任務は世界の果ての壁に大砲を打ち込み、穴を明けることという説明があります。作戦決行は翌日の午前6時。志願書でほとんどの人はパイオニア号関連への配属を希望しており、配属先の希望が特になかった人がここへ配属されたと聞かされる3人。
適当な串田は裏にも記入欄があることに気付かなかったので空欄。
自分に自信がある壺井は自分は何処へ行っても役に立つからという理由で全ての配属先にチェックが入っていました。
ニートの天森の場合は彼の母親が勝手に志願書を出していました。気は小さいですが心の優しい子です。私が風邪をひいた時には茶碗蒸しを作ってくれました、とか何とかいう推薦文を書き添えて。う〜ん、親バカ。天森は母親にもう大人なんだから、開拓局の役に立ってきなさい、と言われたそうです。

パイオニア号へ配属されると思っていた三人は壁へ配属されたことに対してそれぞれ不満を口にしますが、役職がもらえることが分かると、串田と壺井は喜びます。特に串田は就職に有利になると嬉しそう。

世界の果ての壁の染みを見た四人のイメージ。
壺井:土下座しているカニ
富山:空中ブランコに乗る人
天森:お化け
串田:なんだかよく分からない変な染み

見事にバラバラ。それぞれの性格が出ています。
壺井が壁に向かって壁打ちをする時に、持っていたボールが打つ瞬間に消えるのが地味に凄いと思いました。ボールが壁に当たった時に鳥がその音に驚いて飛んで逃げるのですが、これから大きな音がする度に同じことが起こります。天丼!

壺井は西工業地区の鉄工所を経営。特技は右投げ右打ち。好きな食べ物は茶碗蒸し。短気で怒りっぽい。
他人に対して怒り、自分のミスに対しても怒る。
鉄に穴を開けようとしている従業員に、鉄は錐で穴を開けてからドリルを落とす。そうしないとぶれてしまう。と怒りながら言います。やったことがないからできないと言い返されると、じゃあ生まれた時から知っている人が居るんですか、オギャーヴィーン!などと怒りはエスカレート。彼が些細なことで従業員に怒るため、従業員は入ってもすぐに辞めてしまいます。そのせいで鉄工所は潰れかかっています。
そんな自分の性格を変えたいと思っている壺井。ここでは自分を知る者がいないので、正反対の自分になってやろうと思い、怒るの逆をしようと思い立ちます。

しかし、串田に突っ立ってないで仕事をしろと言われたり、ジャンケンに負けたり、アンプの位置のことで揉めたりして、やっぱり怒りそうになる壺井チャンピオン。いや、壺井総合クリニック。又は壺井伝説(過去の人)。

怒るの逆を人に甘くてなんでも許してしまうと勘違いした彼は、怒りに任せて持ち上げた鉄パイプをフルートに見立てて吹いたり、紅茶を淹れて飲んだりします。

「人に甘くて何でも許してしまう人の吹く楽器はフルートです。」
「人に甘くて何でも許してしまう人の飲むものはお紅茶です。召し上がれ。」
「怒ってないです。お紅茶です。」
何だよそのイメージ(笑)無理してお上品ぶる壺井がもうおかしくておかしくて…。
ドラム缶一杯に煎れられた紅茶をすすめられた天森が鉄パイプをストロー代わりにして啜るのですが、すぐにウエーと不味そうに舌を出します。

妙ちきりんなことばかりしている壺井を見かねた富山は、他人より自分に勝て。怒ったら負け、怒らなかったら勝ちにしてはどうか、などと言います。その言葉に納得する壺井。
四人で鉄パイプを運ぶ時に背の低い串田だけ足が宙に浮いてしまいます。身長差が活かされていましたね。

天森はニート。SF好きで、パーセントマンの大ファン。妄想癖あり(動物と合体してスーパーパワーを手に入れてしまうよ〜。地底人が〜、遺伝子の違いから云々)。予想外のことが起こるのが怖い。臆病。配属先へ行く前の準備をしている時、スリに遭うのが不安で財布をウエストポーチに入れ、それをリュックにいれ、リュックをキャリーバッグにいれ、暗証番号を312(サイフ)にし、さらに錠前を付け、鍵を財布に…を繰り返します。ここでは自分を知る者がいないので、正反対の自分になってやれと思い、気が小さいの逆をしようとします。

気の小さい天森は、ドラム缶で遊んでいる壺井と串田をちゃんと止めることができず、遊んでないのに富山に遊んでいると誤解されてしまいます。彼は気が小さいの逆をキレやすい荒くれ者と勘違いし、不良ぶってみます。ふにゃふにゃのシャドーボクシングをし、「誰でもいいから殴りてー」などと言います(これがまあ貧弱で可愛いんだ)。それで壺井と串田にますます馬鹿にされてしまいます。
串田に大好きなパーセントマンのSD漫画上下巻を奪われ、すぐに取り返す天森。天森は串田がどんなに高い所に立っても簡単に取ってしまいます。ここでも身長差が活きますね。ていうか、賢太郎さんがでかいんだな。

天森はここに居ることがますます嫌になり、「かーえーりーたーいー!」と叫び、パーセントマンを読んで現実逃避を始めます。「数学とSFが大好きな僕にとって、これは最早エロ本。」だそうです。

言葉に訛りのあるミスターアンバランスは催眠電波で選挙当選を目論みますが、パーセントマンにより策略が放送され、国民に100%知られてしまいます。怒ったミスターアンバランスは取材中の新聞記者を人質として捕まえてしまいます。パーセントマンがパーセントリングを手裏剣のように投げ、ミスターアンバランスを倒したことにより、新聞記者は助け出されました。パーセントマンからは編集長と同じ葉巻の匂い。

パーセントマンカッコよかったです。久ヶ沢さんの筋肉美が炸裂。決め台詞の「○○する確率100%!」は真似したくなりますね。「P」の漫画のコントのアイデアや「トライアンフ」やKKTVでお馴染みの襖芸が上手く使われていました。登場人物の声は全て賢太郎さんが担当。おお、マイケル本牧\(・o・)/!

また天森と串田がパーセントマンの本を取り合っていたところ、富山がそれに気付き、彼等を叱ります。パーセントマンの説明を天森から受けても、それを否定せず、受け入れる富山。
パーセントマンはヒーローと一般人の二つの世界を持っている。
君も自分と向き合ってみてはどうかと富山に言われ、天森は彼に本を没収されてしまいます。

大砲が運ばれてくる時に遠くに見えるヘリコプターに吊るされた大砲がおもちゃみたいで可愛らしかったです。舞台中央に降ろされるとぐっと印象が変わってしまいますが。パイオニア号もおもちゃみたいだし、「TAKE OFF」の頼人の乗っている軽トラもそうでしたね。遠くに見えるものは可愛らしいという法則でもあるんでしょうかね。

「空」「実」と書かれた二つの箱。
それを見た3人の解釈
串田:空車 実車
天森:空豆の実
壺井:空き地で変な実験

正解は空包と実包。
空包を使って大砲を撃つ訓練が始まります。ちなみに三人はマニュアルを読んでいません(読めよ!)。

まずは装填:天森、観測:串田、壺井:発砲という役割でやってみます。
天森は非力なので掃除の棒を持ち上げるのも一苦労。砲弾をおっかなびっくり扱い、「硬いよ、重いよ、怖いよ〜。」と泣き言を言います。弾を落としそうになり、富山に「危ない。」と言われてしまいます。
お客さんからのウケがイマイチだったのか、「硬いよ、重いよ、怖いよ〜。」を言い終わった時の顔が、つるちゃんのルームメイトが「シルブプレ。」と言った後の顔にそっくりになってました。その後も何回か硬いよ、重いよ〜を連発していると、他の三人が笑いを噛み殺し始め、妙な空気になっていました(^_^;)
串田の観測は超適当で目分量。富山に「信用できない」と言われてしまいます。
壺井は発砲を勝手に自分のタイミングで行い、やはり富山に叱られます。

次は装填:串田、観測:壺井、発砲:天森。
串田は掃除の棒を重量挙げのように持ち上げます。
「そいやっさあ!」(笑)おお、肌天狗の掛け声!
持ち上げることはできても、身長が低いので掃除棒が砲身の穴に届きません。砲弾をダンクシュートのように砲身に叩き込もうとし、富山に止められます。
壺井はやり方が分からないのに自分の考えでやってしまいます。観測器をちゃんと見ようとはせず、「あとは任せた!」と言い次の工程へ。砲台を持ち上げてみたり、風速を測る時「貧乏、大臣、大大臣」と指を差したりしてみたりとやりたい放題。富山に「間違え方がダイナミック過ぎる」と言われてしまいます。
天森はビクビクしてなかなか発砲できません。

最後に装填:壺井、観測:天森、発砲:串田。
壺井は串田、天森には重かった掃除棒を軽々と扱い、素早く掃除を完了。装填も砲弾をむんずと掴み、難なくこなしてしまいます。
天森は得意の数学を活かし、今までおどおどしていた人間とはとても思えないほどキビキビ動いて正確に観測し、素早く計算。終わった後の得意げな表情がカッコよくてカッコ悪い。
最後に串田が思い切りよく発砲。
適材適所ですね。今までに比べればこの組み合わせで断然時間は早くなりましたが、目標は30秒と富山に言われ、壺井はキレるし、串田は文句を言うし、天森は弱音を吐き、「かーえーりーたーい!」と「お母さーん!」を連発。不毛な争いをする三人を見て、ついに富山がキレます。
壺井に「怒るの反対は怒らない!」
天森に「気が小さいの反対は気が大きい!」

「イクラがキャビアになろうとするな、シャケになれ。」
富山の言葉で一気に大人しくなる壺井と天森。
それをからかう串田に富山は「お前うるさい!」と一喝。
串田はガーンΣ(|||▽||| )
このシーンすっごく好きです。

一番時間を短縮できた最後の組み合わせで四人は練習を続けるのですが、串田が勢い余って本当に発砲の紐を引いてしまいます。
その音を聞きつけ本部から無線が入るが、誕生日の祝砲を上げていたと咄嗟に嘘を付く富山。たまたま無線の声の主の誕生日が今日だったため、事なきを得ます。

天森から発砲の前に装填と観測を済ませておいてはどうかという提案が出て、本部に許可を得ようとしたのですが、時刻は午後六時。無線からは蛍の光をバックに「本日の営業は終了しました」の音声が聞こえてきます。流石お役所仕事…。天森はこの辺りからしっかりして来ますね。

夜、開拓隊のスピーチの話をする四人。
富山はスピーチで自分のことを語り始めます。
子供の頃にサーカスの完璧なジャグリングを観て、自分も曲芸師になりたいと思った。結局曲芸師にはなれなかったが、生まれ変わったら曲芸師になりたいと彼は言います。

壺井は今度生まれ変わったとしてもそれは俺ではないと思っています。
今やりたいことは今やるという考え。
「ないなら作ればいい。弱ければ鍛えればいい。できないなら練習すればいい。」
天森はパラレルワールドのことをスピーチ。
すると串田が「人から聞いた話じゃねえか。オチもねえし、くそつまんねえ。」とダメ出し。
スピーチに対してあれこれ言う串田に、富山は作戦成功後のスピーチを任せます。

スピーチで何を話せばいいか分からず、怖くなる串田。初めて人に批判される立場に立つことになった彼に、今まで散々人にぶつけてきた酷い言葉が次々と突き刺さります。
「これだから素人は困るよな」「終わってる」「こいつ嫌い」「パクリじゃん」etc…。
自分の言葉に責任を持たずに、考えなしに他人を攻撃してきたツケが回ってきたんだなあ(m´・ω・`)mそれがまだ社会に居場所を持たない彼なりの社会との関わり方だったのかもしれませんが。言葉は呪いにもなるんだよなあ…怖い。スクリーンに現れてうじゃうじゃ動く彼の分身が何とも言えず不気味で良かったです。

夜中こっそりジャグリングの練習をしていた富山は、うなだれる串田に気付き、声を掛けます。
今まで人の気持ちを考えずに生きてきたと話す串田。
富山は「嫌いなものを嫌いというより、好きなものを好きと言おう。」「他人ではなく次の自分になろう」と彼を励まします。優しいな、富山(´;ω;`)
実は富山は四人の中で一番年下。家庭の事情から早く大人にならざるをえなかった。士官学校にも奨学金をもらい、自力で通った。富山から自分の父は開拓隊の最高司令官だと打ち明けられ、驚く串田。串田は好きな色は黄色、好きな言葉は限定と言い、好きな曲「AUGUST」を再生し、元気を取り戻します。壺井、天森もいつの間にか現れ、富山のジャグリングの練習を手伝います。
四人が少しまとまってきたシーンです。このシーンも好きなんだよなあ。
《続く》