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境界線にブルドーザー

大島渚監督が先日亡くなられましたね。ご冥福をお祈りします。

大島監督の映画で私が観たことがあるのは「愛のコリーダ」「戦場のメリークリスマス」「御法度」の三つ。どれも異常な状況下における人間の愛と狂気を描いた作品です。また、三つとも境界線を恐れず越えてしまう越境者が登場します。

「御法度」でデビューした頃の松田龍平さんは、私の眼には男を惑わす美少年には見えなかったなあ。。

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演技もまだ未熟で、ただ無表情にヌボーッと突っ立っているという印象なのですが、物語が進むにつれてあの危うさのある存在感が顔を覗かせ始めるのです。やはりこの頃から只者ではない感じがしますね。あと、サントラが素晴らしいです。静かな曲調なのですが、ふとしたことで張り詰めていた糸が切れて一気に暴走しそうな不穏さを孕んでいます。

愛のコリーダは何かにつけ定と吉蔵の濡れ場があるので、観ているとだんだん食傷気味になってきます。でも、とにかく吉蔵がいい男なんですよ(社会的、家庭的にはダメダメ人間だけど)。あれだけ何でも許して受け入れてもらえたら惚れるかもなあ…。定の気持ちはちょっとだけ分かるような気がする。うん。

戦場のメリークリスマス」。この映画を観たことがなくても、テーマ曲の「Merry Christmas Mr. Lawrence」を聴いたことのある人は多いはず。東洋と西洋の混ざり合ったシンプルなフレーズの反復が美しい曲です。ピアノを習っている人が弾いてみたいと思う曲ランキングの常連でもあります。

戦場のメリー・クリスマス

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私は教授ファンなのですが、どう贔屓目に見ても彼の演技は酷い。それに、軍人なのにあの化粧は何なんだ(あ、でも、セリアズにキスされてうろたえているシーンは割と好きかも。演技のぎこちなさが、精悍なエリート将校の男らしさが揺らぐ瞬間とマッチしていて魅力的です)捕虜の外国人の日本語だけではなく、日本人の日本語も何言ってるのかよく分からないので、日本人が喋る時にも字幕を付けて欲しい。セリアズの少年時代をデビッド・ボウイが演じるのはどう考えても無理があり過ぎる。とまあ突っ込みどころはたくさんあるのですが、それを差し引いてもこの作品は人を惹きつけるものを持っていると思います。

宗教、人種、文化、言葉、道徳。何もかもが違うコミュニティに属する人達の食い違いとぶつかり合い。捕虜と敵国の軍人という形で出会わなければ、彼らはもっと分かり合えていたかもしれません。ヨノイとセリアズ、ローレンスとハラ。まるで違う環境に生まれ育ったからこそ、彼らは惹かれ合う。相手のことを知りたい、触れ合いたいという欲望は抗い難いものとなる。セリアズは境界線を乗り越え、種を蒔く。自らの死と引き換えに。彼が蒔いた種は芽吹き、日本の軍人、捕虜達を変えていく。ラストのハラのイノセントで破壊的な笑顔に心打たれました。

遠い異国の人であれば違いは明白で、その国と敵対していなければ大抵のことは「外人なんだから(自分達とは違うんだから)しょうがない」という理由で許せてしまえます。しかし文化が似ている近い国の人だと同じことでも許せなくなります。同じ国の人同士であれば言わずもがな。でも、同じ国の人同士だって結局は違うし、完全に分かり合えるわけではない。人は思っていることの中で言えることしか口にしないし、口にした言葉が100パーセント相手に伝わるわけではない(私だってこのブログには書けることしか書いてないです。たとえ超零細ブログであっても誰でも閲覧可能な形で公開されているものだから、言葉と内容は選びます。本当に書きたいことは、ある程度時間が経たないと切実過ぎて書けません)。それでも、その境界線の向こうのことを思って行動すれば、そこには必ずドラマが生まれます。

ライブポツネン in ヨーロッパを先日観直したのですが、ロールシャッハを観た後だとより面白かったです。壁、黒い球、対になった世界。壁で区切られて一つになっていないからこそ、やり取りや入れ替わりなどの面白さが生まれる。こっちとあっちを比べることができる。ズレを楽しめる。壁があることにもメリットはあるなあと思いました。全部おんなじで全部分かってしまったらつまらないもんなあ。ああ、何だか「P」をノーカットで観たくなってきましたよ…。