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小林賢太郎テレビ5

サブタイトルの「異人たちとの対話」。これが今回のテーマでもありキーワードでもあると思うのですが、まず「異人」とはどういう意味か。私がぱっと思いつくのは童謡「赤い靴」の歌詞に出てくる異人。これは外国人のことですね。

私の持っている十年以上前の大辞林で引いてみると、次のように書かれていました。

【異人】
①外国人、特に西洋人。
②ちがう人。別人。
③普通とはちがう性質・能力をもった人

それから、「会話」ではなく「対話」という言葉が使われているのも気になります。「対話」には相手との違いを見つけてすり合わせていくという意味がありますので。これを頭の片隅に置きながら書き進めていきたいと思います。

オープニングの大泉洋さんの登場で志村けんさんとジュリーの鏡コントを思い出しました。手前にいるのが大泉さんなんだろうなっていうのは髪型と頬骨の位置で分かっちゃいましたけど。去っていく大泉さんの笑い方が面白かったので真似していたら、喉の奥で発する声なのでむせて咳き込んでしまった馬鹿は私です(。-_-。)

■ マルポ便
マルポ便は徒歩か公共の交通機関を使う宅配業です。手で持って運べるものならなんでも引き受けます。徒歩だからマルポ便なのでしょうが、ポツネンの「ポ」ともかけているのでしょうか。

共同経営者は「DROP」にも登場した毛虫。でも、DROPの毛虫とは声が違います。人格も別人(別虫?)っぽい。マルポ便の人も定吉くんではなさそうです。賢太郎さんは手塚治虫の漫画のようにスターシステムを採用しているんでしょうかね。

冒頭のコンパスは何処に行ったのかを巡るマルポ便と毛虫とのやり取り。「そうかあ、透明だから気がつかなかったんだな。」という毛虫の何気ない台詞がこの後のストーリーにちゃんと重なってきます。台詞に無駄がないです。

マルポ便の事務所を訪れた大泉さんは、東北の旅館から連れてきてしまった座敷童子を送り届けて欲しいと依頼します。目に見えない座敷童子の存在をあっさり信じるマルポ便。前にも五回そのテの依頼があったそうです。
マルポ便が差し出した手を座敷童子が握った瞬間、見えないのに座敷童子の柔らかい小さな手が見えたような気がして、グッと心を掴まれてしまいました。

この後、マルポ便と座敷童子の東北の旅館への旅が始まります。田舎の風景が美しく撮られているし、座敷童子が生き生きとして見えて素晴らしいです(見えないけど)。やはり妖怪には古き良き日本の風景が似合います。パピコを半分こして食べるシーンとか、水たまりでバチャバチャ遊ぶシーンとか、座敷童子の見せ方が惚れ惚れするくらい上手いです。
これが目に見えてたら興ざめかもしれない。妖怪はバーンと表に出したら駄目だと思うんですよね。特に映像では。妖怪は非日常の存在ですから、見えそうで見えない感じが一番いいと思うんです。

旅館の女将役の犬山さんもいい感じで賢太郎さんの世界に住み着いていました。一癖も二癖もありそうな女将さんでした。豚の貯金箱を持ったまま襖の隙間からマルポ便を見つめる姿がよかったです。

座敷童子を送り届けた後、大泉さんがまたマルポ便の事務所にやって来ます。彼が座敷童子が居なくなってから不幸続きなので連れて帰ってきて欲しいと訴えていると、突然毛虫の毛で作った人形が動き出し、視点がぐるっと移動します。人形を動かしていたのは座敷童子でした。座敷童子は、実はマルポ便と一緒に帰ってきていたのです。旅館でマルポ便が座敷童子の姿を見たのは、座敷童子が旅館を離れる前兆だったのかな。座敷童子は住み着いていた家を離れる前に自分の姿を見せるって言われていますから。女将さんの話によれば、あの旅館には座敷童子がたくさん居るので、一人くらいいなくなっても問題ないそうです。座敷童子だらけの旅館、行ってみたいなあ。毎日座敷童子の人数分の赤飯を用意するのかなあ。年に一回座敷童子に着物を新調するのかなあ…などと想像すると楽しいですね。

多くの妖怪が黄表紙や絵、玩具、芝居、見世物などにされて、キャラクターとして世間に広まったのは江戸時代のことです(もっとも、現在妖怪と呼ばれている非日常・超自然の存在は、江戸時代では「化け物」、「お化け」などと呼ばれていました。「妖怪」と呼ばれるようになったのは昭和に入ってからです。江戸時代にも妖怪という言葉はありましたが、怪異と同じような意味でしか使われていませんでした)今生き残っている妖怪には江戸時代の香りが残っているのです。座敷童子は柳田國男の研究で広く知られるようになったので、昭和以降にイメージが定着した妖怪です。でも、前近代的要素は損なわれることなく残っています。その証拠に座敷童子が洋服を着てスカイツリーに現れたら、それを誰も座敷童子とは認識しないでしょう。

江戸の浮世絵師鳥山石燕の妖怪画は、狂歌仕立てで洒落がかけてあるんですが、私はそこに賢太郎さんがポツネンやKKTVでやっていることとの共通点を感じています。江戸の人々は妖怪画だけではなく、生活や娯楽の中にも洒落や言葉遊びをたくさん取り入れていたんですよね。賢太郎さんは江戸が好きなのかな。賢太郎さんの好きな落語は江戸時代に生まれたものだし。こないだの演劇ぶっくでも江戸の人々のことを話してたし。「矛盾芸術の歴史」でも江戸時代の芸術のことを扱ってたし。この「マルポ便」も江戸の交通の要である日本橋の映像からスタートしたし。

賢太郎さんの世界に大泉さんや犬山さんが加わることで、今までの共演者とでは出せなかった味が出せていたように思いました。コミカルなんだけどあまりコントっぽさがない、ドラマに近い作品になっていたと思います。これは対話だと思いました。

■ 厨房忍者
厨房忍者は厨房に侵入し、ちょこちょこ野菜をかじる害虫的な存在。鬱陶しいんだけど憎めない。あの忍装束と昔の時代劇の人がやってたようなメイクが厨房に馴染まない馴染まない(笑)明らかに異質。
彼を追い出そうとするコック(竹井さん)に対して彼が繰り出す術はどれもへなちょこな術ばかり。臨・兵・闘…と九字を切ろうとするけど、あとは覚えてなくてグダグダ。そんな忍法なんとかいう術よりも天井に立って移動できることの方がよっぽど凄いんだけどねえ(あのセット凄いですよね)。最後の何気なくやってる水遁の術とか。忍法とマジックって、どちらもタネも仕掛けもあるんだけど、それを知らない人にとっては不思議なことに見える所が似てますね。

■ ししおどし目線
将棋を指す賢太郎さんと竹井さん。銀縁眼鏡に羽織袴姿で涼やかなインテリ風の賢太郎さんは、竹井さんが席を外している隙に将棋盤の向きを逆にして、竹井さんの陣地を自分のものにしてしまいます。ししおどしが上下する動きに合わせてカメラが動くことで、カット割りと似たような効果が生まれています。それだけでなく、ししおどしには人格があることが分かってきます。目撃者であるがゆえに脅されるししおどしが不憫でした。二人の間で揺れるししおどしはパカッと真っ二つに!

■ うそつきくん
うそつきくんは嘘ばかりつく小人です。赤いとんがり帽子にとんがり靴、赤と白の横縞の服。椅子に座って足をブラブラさせながら嘘をつき、嘘をついた後に得意げにラッパをプーッと鳴らします。うう…可愛い (*´∀`*)表情が利かん気な子供のようです。辻本さんと竹井さんを意識しないようでしているのがたまらないですね。とても身長が182センチもある人が演じているとは思えないほどの可愛らしさです。「マイネームイズバウムクーヘン」「ジャイアンツの一位指名はチャーハン」いいですねえ…(*≧m≦*)ずっと彼のでたらめな嘘を聞いていたいです。辻本さんに「君は嘘しか言わないですね?」と聞かれたうそつきくんは狼狽えますが、「ぼく…生まれてから一度もしゃべったことがないんです!!」と見事にかわしてしまいます。ブラボー!!!3人のコミュニケーションが取れてるんだか取れてないんだかよくわからないやり取りが好きです。うそつきくんにはうそつきくんなりの価値観があるらしく、自分の嘘を肯定されると途端に元気がなくなってしまいます。竹井さんに「虎も牛も来ていないじゃないか。」と言われて「ゥア゛〜ッ!」と喜んでいる時の表情が良かったです。「バウムクーヘンは日本語で……生命。」どんだけバウムクーヘンが好きなんだよ。

■ 扇風機目線
赤べこの大量発注のため、赤べこ職人の頑固親爺(賢太郎さん)の家を訪れた問屋(竹井さん)。扇風機の首振りに合わせてカメラが移動します。風や首という言葉を使った台詞で話が進んでいきます。賢太郎さんの言葉遊びの本領発揮といったところです。展開が早い早い。赤べこも一瞬で完成しちゃう。机にずらっと並んだ赤べこは圧巻でした。賢太郎さんのここまで一般的な家族関係のコントを観たのは初めてだったので新鮮でした。オチのはっちゃけた感じがいいですね。

■ 矛盾芸術の歴史
矛盾芸術研究家小林賢太郎NHKの歴史番組や美術番組の解説にこういう人ホントに出てきそうだよなあ。喋り方とか表情とか佇まいとかハマり過ぎてて怖いです。
矛盾美術の歴史年表に嘘と本当が混じっているのが厄介です。漢委奴国王印に贋作説があるのは本当だけど、金印文鎮説は、矛盾芸術の観点から見てって書いてあったから多分嘘だ。不二山が不二雄智内の名前に影響と堂々と書かれてる( ̄▽ ̄;)一石命名って何なのさ。さりげなく翁隊が混じってるし。日光東照宮に眠り猫と一緒に起き犬ってのが居たりとか(裏面にパン(笑))。私が一番見てみたいのは高速回転阿修羅です。ちょっとしか映らないのにあの年表はネタのオンパレードでしたね。ちょっと勿体無い。

VTRの前、竹井さんの顔にいちいちズームインするのが笑えます。これはテレビでしかできないことですね。賢太郎さんが変な所で意地を張り、肝心の説も弱いので、だんだん竹井さんとの関係がギクシャクしていきます。社畠孝謙…何故下がジャージ?

■ お題コント
宇宙の旅
テーマ 無重力
 
今回のはいいお題だったと思います。
賢太郎さんのアトリエにある油絵や写真などが気になりました。黒板にはお題コントのプロトタイプらしき絵も貼ってありましたね。無重力を表現する方法を思いついた時のニヤニヤが印象的でした。嬉しかったんだろうなあ。

「手は抜かないよ、僕は。」
ものすごい集中力で絵を描き、道具を作り、台本を書く賢太郎さん。カッコつけてない時の方が賢太郎さんは格好良いと私は思いますね。

3枚の世界の絵で映像を上手く区切ってありますね。
賢太郎さんが、こちら側に話しかけるような感じで絵を描いていたので、初めはてっきり視聴者を描いているのかと思っていました。しかし、実は賢太郎さんが描いていたのは地球。ここで自分の前後左右上下に大きな地球とそこに住む人類をはじめとする生き物の存在を感じて鳥肌が立ってしまいました。なんて広がりのある作品だと思いました。無重力のトリックが話に綺麗に活かされていて良かったと思います。