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まとめ図書館的人生㊦ 獣の柱

イキウメの獣の柱を観てきました。
まとめ図書館的人生の㊦ですが、㊤を観ていなくても特に問題はないと思いました。
どちらも全体的に3.11が濃い影を落としているように感じられます。多分伝えたいことが㊤と一緒なんじゃないでしょうかね。

舞台上にはたくさんの布がのれんのように垂れ下がっています。両端には棚。

2096年 高知県風輪町

神社にお参りに来た鏡一家。
ここまではよくある光景ですが、父親、母親、息子の亘が拝んでいる御神体の御柱様がちょっとおかしい。3人が御柱様を拝んでいると、時間が止まったように身体が動かなくなってしまうのです。盲目の祭司はその隙に母親の尻を触ります。

実は亘は両親に合わせて身体が動かないふりをしていただけです。御柱様を見ても身体には何の変化も起きていなかったので、祭司が母親の尻を触った事に気付いていました。彼が祭司に母親の尻を触るのをやめるよう注意すると、祭司は驚きます。なぜなら、御柱様を見ながら身体を動かすことのできる者は存在しないはずだったから。

2008年 高知県風輪町

アマチュア天文家の二階堂望は、私有地の山小屋で小さな隕石を拾います。
この隕石が降ってきてからというもの、庭で草むしりをしていた夫婦が家の火事に消防隊が来るまで気づかなかったり、望の入っている天文同好会の後輩である藤枝二郎が山小屋で餓死したり、奇妙な事件が立て続けに起こります。それは風輪町だけでなく、東京、そして世界中へと広がっていきます。この隕石は見る者を夢中にさせ、思考を奪い、恐ろしい程の幸福をもたらすのです。我に返らせてくれる人が周りに誰も居ないと死んでしまいます。隕石を見ている間の記憶は我に返った時にはなくなっているので、それを利用した小ネタがいくつかありました。隕石を見た登場人物達の恍惚とした表情が面白い。望の妹の桜は赤ん坊を見るような表情。望の先輩の山田輝夫(通称:部長)はエロ本を見る時の表情、だそうです。最近離婚して実家に帰ってきた桜は、部長を望の勤務する役所の部長だと勘違いしていました。私もそう思ってた(笑)

二郎の死を不審に思っていた望と部長は隕石の力に気付いてしまいます。そこで、人々を隕石の危険から救おうと桜と3人で東京に行き、マスコミなどを回って隕石のことを話すのですが、誰も信じてはくれません。レポートを見せてもよくできたフィクションと思われるだけです。望は部長と桜が何者かに隕石を見せられている隙に行方不明になってしまいます。

それから1年後、巨大な柱が空から世界中の都市に降ってきます。柱は隕石と同じ成分で出来ています。都市では多くの死者が出て機能が麻痺し、生き延びた人々は人口の少ない田舎へ避難します。

二郎に隕石を見せたラッパ屋には病気の妻が居ます。妻は筒の中に入った隕石を見て幸せそうにしています。隕石を見ると術後の回復が早いと妻は言います。隕石は麻薬や覚醒剤のように人に強すぎる快楽を与え、駄目にするものと思っていたのですが、こういう一面もあるわけですね。妻は柱を見ながら快楽の中で夫と共に死ぬことを選びます。ラッパ屋は生き残るんですけどね。池田さんの演技は多分この作品で初めて見たと思うのですが、怪しくっていいなあ…。

災害などの人間の力ではどうにもならない大きなことに直面したとき、人間はまず思考停止してしまいます。柱はそんな状況をよく表していると思いました。柱を御柱様として崇めたてまつるのも、自分達では抱えきれないことと折り合いを付けるために古来から世界中で行われてきた人間の知恵なので、有り得ない事ではないです。

風輪町にも都市から避難してきた人達が数百人やって来ました。その中には望も居ましたが、彼は失踪する前とは随分変わってしまい、自分のことを柱の大使と言っています。みんなが真面目な話をしている間中、ずっと鳥とバレエを合わせたような変な動きばかりして、落ち着きというものがまるでありません。柱の大使になってからの浜田さんははんにゃの金田さんにそっくりでした。絶えずあのパタパタふわふわした動きをし続けるのは大変だろうなあ。みんなから頭がおかしくなったと思われていた望は、隕石をかじってラッパを吹き、柱の大使であることを証明します。そこに居た人達は柱を見た時のように笑い転げます。それが物凄く怖いのです。狂ったように笑う集団の恐ろしさ。柱の落とされた各都市でもこのようなことが起きていたのでしょうね。

町の人達に隕石のことを伝え、田畑を開墾し、町を守ってきた部長は、数百人の避難者達に町を明け渡し、町を去ることにします。そして、行く先々で土地を耕し、日本の自給率を上げていくことを目指します。やるべきことを行動に移そうとしていた望の思いを彼は受け継いたんですね。部長は桜にプロポーズをします。カッコいい!農業は強い\(・o・)/!

2096年 風輪町

亘は柱の影響を受けない貴重な存在、見える者として町の歴史資料館に呼ばれます。亘の他にも南日菜子、そしてなぜか望も見える者として呼ばれます。望は昔と姿が変わっていません。日菜子は柱の影響を受けないために差別され、他の人達が住む地域からは外れた所で暮らしていました。

亘や日菜子は、自分達の能力を柱に怯え依存する人々のために役立てたいと思っていましたが、部長の曾孫の山田寛輝に自分達の町を作るように言われ、風輪町を出ていきます。やがて柱に適応できない人間は滅びるのでしょうか。滅びなければ、彼らと見える者との関係は、「太陽」のノクスとキュリオみたいな感じになってしまうのでしょうか。見える者の方が旧人類より先に滅びてしまう可能性もあります。それに柱が脅威ではなくなっても、また別の脅威がやってくるかもしれません。先のことは全く分からないのです。

結局、柱の大使は人々を救ってはくれませんでした。ただ、何かが変わる前にひょっこり姿を見せるだけ。柱が自然を象徴する存在ならばさもありなんだと思います。ラッパ屋もいい人なのか悪い人なのかよく分かりません。ただ一つ確かなのは、事実を知って人々の為に行動した部長、その仲間達によって四代先まで続いた命があるってことだけ。

ニュータイプにせよ、旧人類にせよ、生きるのは大変です。けれど、死ぬまで生きるしかないんだと私はこの作品を観て思いました。