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LVE POTSUNEN 2013 P+ ②

LIVE POTSUNEN 2013 P+①の続きです。

以下ネタバレです。未見の方はご注意ください。

■ んあえお

BGMはなし。「ん、あ、え、お」の4つの音を発するだけで、感情を表現します。
男は誰かと会話をした後、ドアを開けようとするのですが、どんなにドアを引っぱっても叩いても全然開きません。耳から出てきた柔らかい赤い球。男はそれを気に入ったらしく、「あー」と言いながらプニプニ触っているのがなんかやらしかったです。あの声が遅れて聞こえる技はお見事。あのエコーも自分でやってるんですかね。音響の人が操作してるんじゃないかと思うほどの自然さでした。
男は誰かに告白をするのですが、振られてしまいます。賢太郎さんの作る話で恋愛が成就することってほとんどないなあ。まあ成就したらポツネンじゃなくなっちゃうけどね。
ドアは押したら簡単に開きました。男が拍子抜けして暗転。

幕間映像
どこか物悲しくて大好きです。砂浜に佇む男(多分ポツネン氏だと思う)の前に空き瓶が置かれると、男の姿が光の屈折で歪み、瓶の中に砂が注がれると、だんだん男の姿が見えなくなります。その瓶を持って先程と同じ位置に立つ男。海はあらゆる命が生まれ、還っていく場所でもあります。男も一度死んで再生したのかもしれないなあ…なんてことを考えました。

■ Lines & Diver

音楽と映像とパフォーマンスの融合が美しいです。漫画の奴の時もですけど、生で観ると賢太郎さんが一生懸命椅子を用意したり布を張ったりしているのがよく分かって、それも何だか手作りな感じがしてよかったです。

私はこれを観ると、幼稚園の休み時間に園庭の遊具に座って空を眺め、先生が自分を呼ぶ声がするまでとりとめのない空想をしたり、手を汚しながらも無心になって絵を描いていた頃の気持ちが蘇るのです(私はボーッとした幼児でした。今もボ一ッとしてるけど)。壁に絵を描けば、壁を越え、すり抜け、何処までも行けるのではないかと思わせてくれます。想像を膨らませ、何かを生み出す喜びに溢れている作品だと思います。

初めは白い手に促されながら絵を描いていた男は、徐々に楽しさに目覚め自発的に描くようになります。時には白い手が男の思うように動いてくれないこともありますが、協力しながら様々なものを描いていきます。Linesでは白い手と遊び、Diverでは旅をします。Lineではあの赤い球が再び登場します。やはりぷにぷに触っていました。
ほの暗い水と高い空。海の生き物たち、水滴が落ちる水面、通過する線、渦を描く線。感覚的に心地よいものばかりが集められています。
ラストは「P」と違います。上から降りて来る線を手を盃のような形にして受け止める男。
その線は三角形のタングラムになります。タングラムをエレベーターのボタンにして男は二階に上がります。遥か上の方にはポツネン氏。男がドアを開けると、タコの触手が現れ、彼を引きずり込みます…が、それは実は男の腕にはめられたぬいぐるみだったというネタバレ。

幕間映像〜ラスト
青年が入ってきたのは劇場の客席。今まで普通に言葉を話せていた青年が、ここでは「ん、あ、え、お」しか言えなくなってしまいます。彼の言っていることの翻訳は字幕で表示されます。客席では笑ったり驚いた時に声は出しますけど、基本的に喋らないものね。。
青年は楽屋を見つけ、中に入ります。そこには赤い帽子が置いてあります。青年が帽子を被るとポツネン氏になります。開演のベルが鳴り始めます。

素晴らしい。永久に続く螺旋構造です。常居次人的な。 

見る側の人間が見られる側の人間へ変わったということなのか。
あとは貴方がたがこの話を作る番ですよ、ということなのか。
先人からバトンを受け取って次世代へ渡しているのか。
色々な意味に解釈できますね。

■ カーテンコール一回目とボツネタ

賢太郎さんによる挨拶と、「P」の海外公演でボツにしたネタの発表。

ボツネタはアカミー賞みたいな感じ。
天国の祖父も喜んでくれてると思います。…ま、死んでないけどね!
ギャグを言おうとすると、客席から笑い声がして邪魔されてしまう。
これらを何語でもないハナモゲラ語でやったら変な空気になってしまったそうです。
 
ボツにした理由は、実際の客席の声と効果音としての客席の声が混ざってしまったということ。
それから、フランスの人に日本語だと思われてしまったということ。成程ね〜。
盲点でした、とのこと。

このコントは言葉の意味が細かく伝わらないと笑えないと思います。
ハナモゲラ語だと、スピーチをしていて客の声に邪魔されてるな〜ぐらいしか分かりませんでした。

カーテンコール後のボツネタの披露ではありましたが、これも観客を巻き込んでのパフォーマンスだったのではないかと思いました。こういう手の内を明かすことまで作品にしてしまうとは流石です。転んでもタダでは起きない!

■ おまけ 手の奴 東海道五十三次

賢太郎さんは海外の街を歩いていて日本の街を歩きたくなったそうです。凱旋門にパと書かれた提灯を吊り下げたくなったり、そうだ京都に行こうと思ったりしたとか。

大きな大きなおまけコーナー。賢太郎さんお得意のご当地ネタを入れたhand man。江戸時代、弥次さん喜多さんが2週間かかった道を賢太郎さんが9分で移動します。「五十三次全てに名物があると思うなよ!」は名言。

日本橋からスタートし、横スクロールのゲームのように手の奴と賢太郎さんが宿場町を順番に移動します。
あの名言の通り、結構空白がありましたね。なんにもない宿場町を通る時には指を鳴らしてました(笑)あ、なんにもないんじゃなくって、余裕があるでしたっけ…。空白があったにも関わらず、映像に使われている絵の量が半端じゃなかったです(゚o゚;

食べ物はねばねばぬるぬる系と練り物系が多かったかな。あとは乗り物とか、工場の名物が多かったという印象。やっぱり弥次喜多に出てくる丸子のとろろ汁と桑名の焼き蛤は外せませんよね。

戸塚ではKKTVのトツカクが!
箱根の寄木細工が綺麗でした。登呂遺跡とグランシップがそっくり!客席からもどよめきが起こりました。

私は愛知県と静岡県に住んでいたことがあるので、知っていることが多くて得をしました。黒はんぺん、他の地域の人は知らないかもしれませんね。しぞーかおでんの具として使われたりします。おでんの出汁が黒いし、青のりや削り粉をかけるので、初めて見たときはなんじゃろかいと思ったよ。実際に住んでいた所の近くの宿場も出てきましたしね。うちの父が就いていたのと同じ業種の工場も出てきたので嬉しかったです。

ここで静岡県民だったことのある私からの富士山豆知識。静岡県に引っ越した当初は家のベランダや窓から富士山が見えることに感動したが、一週間で慣れてしまう。あと、静岡県側より山梨県側から見た方が凹み(噴火の跡)が見えないので綺麗。以上。世界遺産登録おめでとうございます!

シャチホコと鯱が並んでジャンプしながら海を泳いでいたり(丸っこくて可愛いんだ(o^^o)♪)、助けたバイクが恩返しに来たかと思ったら、ピアノだったり、すっとぼけた味わいがたまりませんね。F1レースもよかったなあ。亀山ではたくさんのロウソクの中にオペラ座の怪人!♪ジャーン!これはカッコよかった!!!ゴールが近くなると、三度笠に縞の合羽という出で立ちの股旅の男が登場し、歩き出すのです。賢太郎さんこの格好が似合ってましたね。ゴールの京都三条大橋では京都タワー五重塔が飛んでいきます。ついでに股旅の男も飛んでいく!

終始手拍子鳴りっぱなし、お客さん大盛り上がりでした。


二度目のカーテンコールでは、毛虫が持ってきてくれた北海道のお客さんからのメッセージを読んでいました。
北九州は暑いですか?北海道も暑いですというような内容でした。北海道って冬は寒いし、夏は暑いし、大変ですね…。
それから賢太郎さんの「あー楽しかった」という言葉が聞けました。それが何より嬉しかったなあ。


「P+」は、一つ一つの作品にきちんとオチがつけられていますが、かなりの多層構造です。
なので、どの階層のドアから入り、その階層のドアから出るかによって、全然話が違ってくると思います。すぐにドアから出てしまい拍子抜けするか、袋小路にぶち当たって苛立ちを感じるか、素敵な旅をして帰ってくるか、迷宮に入り込み途方に暮れるかは観た人次第。

何かを創り出すのは、たった一人で混沌の中に放り出されるのと同じことだと思います。誰も見てくれる人が居ない段階では、何を創作していようとそれはただの妄想でしかありません。だから自分自身と対話せざるを得なくなります。不安や孤独は何かを表現し続ける限りずっと付いて回る病のようなものだと思います。多分これからもポツネンシリーズからそういったものが消えることはないのでしょう。

あと、前回の「P」からですけど、あんまり自分が自分がという感じがしなくなりましたね。個人の寂しさではなく、もっと普遍的な寂しさを描くようになったのかな、と思いました。登場人物それぞれの輪郭が薄くなって、誰でもないんだけど誰でもあるという印象が強くなりました。

今回のフライヤーや物販は「The SPOT」のお土産のようなものだと思います。あの世界の登場人物を自分の分身として、私は気づかぬうちにあの街を彷徨っていたのかもしれません。観客がフライヤーやグッズを劇場の外に持ち出すということは、現実が虚構に浸食されるということです。
まだまだ物語は続いているのです。

À Suivre…