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あまちゃん放送終了

あまちゃん」が終わってしまいましたねえ…。あまちゃんが放送されていたのがずっと前のことのように感じられます。新しい朝ドラの「ごちそうさん」を何となく観る毎日です。今のところ再放送のちりとてちんの方が面白いですけど。

あまちゃん」で成長しない主人公を書きたかったと宮藤官九郎さんは語っていたらしいです。ええ、その通りでしたよ。アキちゃんはこのドラマの中で海女になり、潜水士の資格を取り、アイドルになり、映画に出ましたが、彼女そのものはほとんど変わっていません。結局アマチュアのままで終わってしまいました。
それがよかったのです。人は未完成のものに共感するし、応援したくなるものです。楽しいからやる、かっけーからやるを行動原理とするアマチュアの純粋さに人は惹かれるのです。高校の潜水土木科にはアキちゃんに続いて女生徒が入ってくるようになり、潮騒のメモリーズを見たミズタクの心に火を点け、夏ばっぱは長年帰ってこなかった娘がめんこい孫を連れて戻ってきて大逆転。鈴鹿ひろ美と太巻さんは自分の原点を見つめ直し、間違えてしまった過去をやり直す、春子さんは挫折した過去と向き合い、それを回復させていく…。彼女と関わった人達は、彼女の影響を受け、どんどん変わっていきます。

田舎を題材にした作品は田舎のいい面しか見せていないことが多いです。しかし実際には悪い面もあります。クドカンさんが凄いのは田舎のいい面ばかりでなく悪い面もきちんと描いていたということです(悪い面も徐々に変わっていくんですけどね)。田舎というのは、どこどこの奥さんがお昼にスーパーで霜降りのすき焼き肉を買ったとかいうのがあっという間にそこらじゅうに広まる世界です。最初の頃のパチンコばっかりしていた春子さんや元ローカルテレビ局の女子アナで地元の名士の妻であるユイちゃんのお母さんのように周りからよそ者とみなされた者は、腫れ物を触るように扱われます。数少ない若者には地元の将来の為大きな期待が寄せられます。そういうのがユイちゃんや春子さんは嫌で東京に憧れていたのでしょう。しかし、東京に行けば嫌なことはなくなり、毎日楽しく過ごせるかというとそんなことはない。それは若い頃の春子さんと東京編のアキちゃんで十分過ぎるほど表現されていました。どんな場所にもいい面と悪い面の両方があります。そして、人間なかなかいい面には気付きにくい。

アキちゃんは訛ってますけど元々は東京人です。春子さんにはなんにもない所に見えていた袖ヶ浜も、元々地元の人間ではないアキちゃんの目を通して見ればかっけーことに溢れています。別にここではないどこかに行かなくても、特別な存在にならなくても、よく見れば日常の中にかっけーことはいくらでも転がっていて、ドラマはいくらでも生み出せるのです。日常を楽しくできるかどうかは結局その人次第なんですよね。

アマチュアのアキちゃんの正反対の位置に居るのが大女優の鈴鹿ひろ美です。彼女は天野アキにしかなれないアキちゃんと違い、どんな役でも演じ、そのためには努力を惜しまないプロ中のプロです。彼女は震災後自分の歌声で北三陸の人達に笑顔を届けたいと思い、復活したばかりの海女カフェでリサイタルを開きます。リサイタルという言葉でどうしてもジャイアンを思い浮かべてしまい、嫌な予感がしていたのですが、それは思いっきり外れました。

鈴鹿さんは不吉な歌詞を三代前からマーメイド 親譲りのマーメイドと天野家三代の物語に変え、透明感のある美しい歌声で過去を浄化してしまいます。笑顔を浮かべる若春子の涙の美しさ。この亡霊はこれ以降姿を現さなくなります。鈴鹿さんと和解してからもまだ心のどこかに残っていた未練がこれでなくなったのでしょう。アイドルを諦めた頃から止まっていた春子さんの心の時間がようやく動き出したのです。涙で顔をびちょびちょにして泣く太巻さん。彼の胸に湧き上がっていた思いは複雑だったでしょうね。春子さんは鈴鹿さんが今までわざと下手に歌っていたのでは?という疑念を抱きます。もし全てが鈴鹿さんの手のひらの上での出来事だったとしたら…恐ろしい。流石プロの女優!(´Д`;)

ユイちゃんはアイドルになる夢を諦め、3.11後は自分の感情を完全に押し殺していました。心の底から絶望し傷付いていた彼女を包み込み守っていたのは袖ヶ浜のみんなでしたが、彼らは彼女の触れて欲しくない領域へは入っていけませんでした。そこにずかずかと入っていけたのはアキちゃんだけだったんですよね。ユイちゃんはアキちゃんと関わることで本来のめんどくさい自分を取り戻し、自分の中に眠っていた欲望を思い出します。

春子さんと正宗さん、鈴鹿さんと太巻さん、安部ちゃんと大吉さんはよりを戻し、6人で合同結婚式を開きます。大吉さんの未練がましさ…ちょっと前までかっこよかったのに…。せっかくアキちゃんがプロポーズのお膳立てをしてくれたのに…。

勉さんの琥珀体験教室で子供が恐竜の骨を見つけます。その前にはミズタクが恐竜の骨を見つけ、それを箸置きにしていました。ものすごい発見をあっさりしてしまうところがミズタクっぽいですね。めちゃめちゃ悔しがる勉さんが可愛いかったです。「琥珀なんか」とか言わないで〜!>_<それから、お客さんで混雑している梨明日で焼きうどんを作っているユイちゃんのお母さんを見て、ああ地元に馴染んできたなあと温かい気持ちになりました。

そして最高のフィナーレ。潮騒のメモリーズのお座敷列車。ヒビキ一郎はチケットを正宗さんに譲る成長を見せました。潮騒のメモリーズ、春子さん、鈴鹿さんの歌う姿が次々と映し出され、私の頭の中を今までの名シーンが走馬灯のように駆け巡りました(´;ω;`)

ライブを終えたアキちゃんとユイちゃんは畑野駅から先へと歩き始め、あの日北鉄が止まったトンネルを二人で抜けます。トンネルの向こう側から漏れる光が希望のようにキラキラ光っていました。それから灯台に向かって走り出す二人。昔春子さんが書いた呪いの言葉、海死ね、ウニ死ねを踏みつけてジャンプ!

アキちゃん達はまだまだこれからです。ミサンガはまだ切れていませんからね。明日も明後日もあります。今はまだ畑野駅までしか通じていない北鉄も、やがては東京まで繋がるでしょう。

「歌っても歌わなくても、津波の事は頭から離れませんから。どうぞ、お構いねぐ。」夏ばっぱが鈴鹿さんに言った言葉が今でも私の心に深く突き刺さっています。震災により多くの大切なものを失ってしまったことは被災地の人達にとっては当たり前のこと。それをなかったことにはできない。励ましてもらう必要などない。自分達で何とかしていくのだから。「お構いねぐ」という言葉に岩手の人達のプライドと強さを感じました。

あまちゃん人気で被災地に注目した人達が実際に観光に訪れたり、まめぶやミサンガのような地元で作られた物を買ったり、あまちゃんのイベントを開いて盛り上がったりすることが、被災地を元気にしています。みんな誰かに遠慮することなくやりたいことをやればいいんですよね。それがいい結果に結びついていることに勇気をもらいました。

ストーブさんが作った北三陸観光協会のホームページは、実際に見ることができます。このホームページの潮騒のメモリーズのライブ映像を観ていると、現実にもアキちゃん達が居るような気がしてくるから不思議です。優れた虚構が現実にリンクし、現実を変えていく凄さをこの半年間見せつけられました。クドカンさん、能年玲奈ちゃんをはじめとする役者さん、スタッフの皆さん、本当にお疲れ様でしたm(_ _)m

あ、ハゼヘンドリックスって結局なんだったんだろう…。