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建てましにつぐ建てましポルカ

ヨーロッパ企画の「建てましにつぐ建てましポルカ」を西鉄ホールで観てきました。

建てましに建てましを重ね、迷路のようになってしまったお城が舞台の迷路コメディです。中世ヨーロッパの狭い町並みのようで、見えない部分の道を想像させるようなセットでした。一番前の席のお客さんはちょっと見づらかったかもしれませんね。上の方で役者さん達が演技している間はずっと上を向いたまんまでしょうから。複雑な構造のお城のどこから何が出てくるかというワクワク感。目的地が見えているのになかなか辿り着けないもどかしさ。辿り着けた時の達成感。ゲーム的な面白さのある舞台でした。滝本晃司さんの作曲したのどかでちょっとミステリアスなポルカがよく合っていました。

バイエルン卿と従者ジーニーはお城のパーティでトイレに行き、戻る途中で迷ってしまいます。ジーニーは自分達が迷っていることを知りながら、なかなか主人であるバイエルン卿にそれを言い出せません。おろおろするジーニーと優雅なバイエルン卿の対比が可笑しかったです。ワイングラスを片手に歩いていたバイエルン卿も同じ所を何度も通るうちに流石に迷っていることに気づき、お前は一人で抱え込み過ぎるとジーニーを叱ります。うん、抱え込んじゃダメだよ( ・∀・)っ

奥の渡り廊下をパーティ会場へ食べ物や飲み物を運ぶメイドが通ります。ジーニーは彼女に道を聞きますが、彼女はバイエルン卿達のいる辺りは管轄外で分からないと答えます。自分の管轄外のことは分からなくて融通が利かないっていうのは、現実世界でもよくあるよなあ。

フィリップ卿と従者ピートは甲冑のある場所で待ち合わせをしていたのですが、はぐれてしまいました。彼らは何度も甲冑のある場所に行こうと試みますが、全然辿り着けません。やがて甲冑を探すことを諦めたピートは、主人を見捨てて自分だけパーティ会場に向かうことにします。ピートはバイエルン卿達にフィリップ卿への伝言を託します。ピートが裏切ったことに腹を立てたフィリップ卿もジーニーにピートへの伝言を託します。フィリップ卿とピートがバイエルン卿達に伝言を託すのは、彼らがそこから動かないと思っているからです(笑)

新興貴族のハインリッヒ卿はちょくちょくバルコニーに現れます。彼はこの城の最新の地図を持っており、バイエルン卿やフィリップ卿に土下座をすれば見せてやると言います。嫌な奴…。バイエルン卿とフィリップ卿はプライドが邪魔をして土下座をすることができず、迷ってないふりをしてしまいます。パーティ会場に近いバルコニーと彼らの居る場所とは直線距離では目と鼻の先です。窓を足がかりに登ればバルコニーに行けそうですが、貴族なのでそんなはしたないことはできません。

迷路のようなこの城にはどこからか乞食が入り込んできます。乞食は独特の文法で喋ります。「お前、来る」「俺、桃、食べたい」とか。でも、頭はいいです。城の道を知り尽くしていますし、交渉も上手い。パーティでできるだけ多くの人に顔を覚えてもらうことが貴族にとって重要だということも知っています。

バイエルン卿とジーニーは乞食に道案内を頼みます。しかし、乞食はただでは引き受けません。二人に桃を要求します。乞食と話しているうちにバイエルン卿に乞食の喋り方が移ってくるのが面白かったなあ。ちょうど奥の渡り廊下を通りかかったメイドが果物の盛り合わせを運んでいたので、彼女をなだめすかし桃をゲット!桃を丸ごと食べる乞食とその傍らに居るバイエルン卿達をハインリッヒ卿が見つけてしまいます。バイエルン卿は乞食に道案内をさせようとしていたことをハインリッヒ卿に知られたくないので、乞食に罵詈雑言を浴びせて追い払ってしまいます。

「俺、傷ついた…」と道案内することを拒否する乞食。乞食に道案内してもらうために要求に従うバイエルン卿。道化は乞食に芸を見せるようバイエルン卿から頼まれますが、それを断ります。そんな彼を挑発する乞食。怒った道化は芸を見せようとするのですが、乞食はピートが厨房から持ってきたパンに心を奪われ、道化のことなど見ていません。道化は乞食を追いかけ、強引にジャグリングを見せますが、乞食はすぐによそを向いてしまいます。それがなんか悲しかったなあ・・・。

バイエルン卿とジーニーは乞食に案内してもらい、なんとかパーティ会場に到着しました。しかしそこはもぬけの殻。参加者達はとっくに二次会会場に移動していました。その会場への案内図を持っているのもハインリッヒ卿です。バイエルン卿はまたもやプライドが邪魔して彼に見せてくれと言えません。

後半になって、問題が次々と現れます。姫は屋根の上を駆け抜けてお兄ちゃまである第一王子の部屋へ行き、彼を連れて謝肉祭へ行こうとしています。屋根に飛び降り、タタタタっと走っていく姫様のやんちゃっぷりがよかったです。第一王子は怪物で、塔に幽閉されています。彼がのそっと塔の窓から顔を出した時はびっくりしました(よく見ると可愛いんですけどね)。彼が怪物であることが外に知れては王家の一大事。騎士カールは姫と第一王子の行方を追っています。

白いローブを纏った魔法使いは魔族の企みを阻止する為、城の北の塔にオーブを置きに来ました。昔のドラクエっぽいなあ。黒いローブの男はいかにも怪しげ。彼の後ろには魔族のシルエットが浮かび上がります。「ごきげんよう、世界が」などと倒置法を使った台詞で、自分が魔族であることを匂わせまくったり、メイドをカエルにして脅したりします。なのにみんなから無視されているのが哀れでした。

登場人物が全員舞台上に揃い、事態の収拾がつかなくなった状態で物語は終わります。RPGのようにファンタジーな衣装を着た登場人物達の揃い踏みは圧巻。おもちゃ箱をひっくり返したようなインパクトがあり、ビジュアル的に面白かったです。

世界の終わりと王家の危機、2つの無視できない問題が生じているのに、バイエルン卿とフィリップ卿の関心はパーティに参加することにしかありません。非常事態の中で現実と向き合おうとせず、旧来の価値観ややり方を貫こうとするその様子は、今の世の中にも当てはまると思いました。それぞれが自分の抱えている問題にしか興味がないっていうのもね。

最後のガヤガヤしている中で魔法使いはハインリッヒ卿に道を教えてもらっていたようなので、おそらく彼女はオーブを置くことができるでしょう。あとはどうなる…?

乞食は乞食なのに太っていました。ということは相当うまくやっているということです。城のあらゆる道を知り尽くした彼は、身分は乞食でも勝ち組です。迷路のような城の中では人の立場も随分変わってしまいます。それが痛快でした。この城、ただ可愛いだけじゃないぞ。