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ライクドロシー

12月7日に「ライクドロシー」をキャナルシティ劇場で観てきました。
紙芝居のような可愛らしい舞台でしたよ。おとぎ話のような昔の洋画のようなよくできたファンタジー。
パンフレットがこれまた絵本のようで可愛いのです。いつまでも持っていたくなるような感じ。

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とある島に脱獄囚が流れ着きます。

優しいが頭が悪いアクロ(高橋一生さん)。
思いやりがなくて怒ってばかりのバイス(片桐仁さん)。
賢いが臆病者のリオ(塚地武雅さん)。

彼らは囚人服を着て、鎖で繋がれています。アクロとバイスは起き上がりますが、リオだけが浜辺に横たわったまま動きません。バイスが鎖を外すために彼の手を切断しようとすると(非道い…)、ようやく目を覚ましました。模範囚だったリオは、出所できる日が近いので脱獄をしたくなかったのですが、彼の手は鎖で他の二人と繋がっているので、不本意ながらも脱獄する羽目になったのです。海を泳ぐ時は最悪だったでしょうね。片方は平泳ぎで片方はクロール…可哀想に、そりゃ溺れるよ(笑)刑務所へ帰ろうと主張するリオとそれに反対するアクロとバイスとで揉めていると、猛スピードでやってきた車が事故を起こし、中から3人の男が放り出されてそのまま亡くなりました。彼らは島の芸術祭に訪れた芸術家です。

彼らの着ていた服を奪い、片足を鎖で繋がれたアクロは上着を、片手を鎖で繋がれたバイスはズボンを着替えます。リオは両手を鎖で繋がれているため、着替えることができません。しかしそのままではまずいということで、結局彼は二人に囚人服を剥ぎ取られ、ランニングに短パンという格好になります。
 
そこへザポット市長の召使いマッツ(長澤まさみさん)が3人の芸術家を迎えにやってきます。
アクロ、バイス、リオの3人は、芸術家になりすましてザポット邸に向かいます。

ザポット市長(銀粉蝶さん)はとにかくめちゃくちゃな人です。我が儘で横暴で残忍。敵対するシーベル派の人間に平気で銃をぶっぱなし、手榴弾を投げつけます。
招待された芸術家の中の誰になりすますのかを考える3人。一番簡単そうなのが詩人なので、3人とも詩人になりたがりますが、マッツがザポット市長にアクロを詩人、バイスを彫刻家、リオを音楽家と紹介したため、マッツに言われた通りの役割を演じることになります。

3人はなんとかザポット市長の前で正体をバラさずにやり過ごし、部屋に戻りました。ほとんど会話はうんこだったけどな(笑)しかし、マッツは3人が脱獄囚ということに気づいていました。部屋に入った途端、急に態度が変わり強気ドSモードになるマッツ。彼女は車が事故にあったところも、3人が服を奪って着替えたところも見ていたのです。

マッツは3人の正体を黙っている代わりに、ある計画への協力を求めます。それは、彼女がザポット邸から脱出し、島を出るための地下道を掘ること。3人はマッツに協力することにします。部屋の暖炉から道を掘り進めるアクロとバイス。その騒音を太鼓を叩いて誤魔化すリオ。掘って出た土は、バイスの彫刻の材料として使われます。3人を怪しむザポット市長の息子スラーの詮索をなんとかかわしながら作業は進んでいきます。そんな中、再びザポット市長との面会があります。彼女は音楽家の演奏を聴きたがっているのです。

泣きそうな顔でピアノに向かうリオは、ピアノの蓋の開け方も知りません。アクロに蓋を開けてもらうと、一本指でポーンポーンと同じ鍵盤を押し続けます。それを見かねたアクロは、ピアノの音に合わせて即興で詩を朗読し始めます。とは言っても、車雑誌に書いてあるフレーズを並べて言ってるだけです。演奏が終わると、ザポットは感動して拍手をしました。ブラボー!このシーン好きですね。ビクビクしながらピアノを弾く塚地さんが可愛かったし、その場しのぎで始めた音楽が熱を帯びて形になっていく様子が見事でした。

どんなに掘っても地下道は一向に港へたどり着きません。それもそのはず、地下道は港ではなくザポットの妹シーベルが閉じ込められている牢屋へ通じていたのです。彼女は3人に本当のことを打ち明けます。ザポット市長の妹シーベルの魔法によってマッツの兄ウルバの肉体にはザポットの死んだ息子スラーの魂が入っていて、彼女の目的はシーベルに魔法で兄の肉体からスラーの魂を出してもらうことだったと。

マッツに利用されていたことを知った3人は怒ります。まあ当然ですね。しかし、ウルバを助けるために協力して欲しいと必死に頭を下げるマッツの頼みをアクロとリオは引き受けます。バイスだけは怒りが収まらず、ザポット邸を出て単独行動を取ることにしましたが捕まってしまい、彼はザポットに自分たちの正体が脱獄囚だとバラしてしまいます。

マッツとアクロとリオはバイスを救出し、その後牢獄からシーベルを救出しました。彼らを追ってきたザポットと手下のチュラピは、壁の下敷きになります。シーベルは木の杖で妙な呪文を唱えながら大仰な動きをし、ウルバの中のスラーを追い出そうとしますが、何も起こりません。実は魔法はインチキで、ウルバはスラーの死後、ずっとスラーのふりをしていたのです。どうして教えてくれなかったのかとマッツが聞くと、ウルバはスラーとの約束だったと答えます。スラーは内紛の絶えない島が平和になることを願っていて、それは芸術祭での彼のスピーチにかかっているのです。

3人は密輸船で島を出ることになりました。リオとバイスは無事密輸船のコンテナに入りましたが、アクロは芸術祭のステージに立たなければならなくなってしまいます。アクロがステージで詩を朗読しているのを見たリオは、出航するかしないかギリギリの時間だというのにアクロを助けるためにコンテナを出てしまいます。アクロの詩に合わせてピアノを弾き始めたリオを見て、ついにバイスもコンテナを出てステージに向かいます。

詩の朗読をやめたアクロは、自分の言葉でスピーチを始めます。僕たちはお互いの事が嫌いだった。でも相手の悪いところを嫌うとどんどん上手く行かなくなる。相手の悪いところはなるべく嫌わないようにしよう。お互いのいいところを合わせていけばいい。そんな内容でした。素直な気持ちで発せられた言葉というのは人の心の奥まで届きますね。彼のスピーチは島民の心を動かしました。煙突から出てそれを聞いていたザポットは、シーベルのローブを着ているマッツと一緒に居るところを島民に見られ、シーベルと和解したと勘違いされてしまいます。

島に平和が訪れてから3年後、3人は本当に芸術家になってしまいます。息子の魂がもうこの世には居ないことを知ったザポットは、すっかりイケメン好きのおばさんになってしまい、ウルバとアクロをかわいがっています。マッツが来ないかと気にするバイスはやっぱりツンデレだと思います。再び3人の前に姿を現したマッツは再び彼らに協力を求めます。今度は彼女のウルバ以外の兄の救出です。彼らの物語は、まだまだ続くのです…。

この作品は「オズの魔法使い」を下敷きに作られています。
かかし、きこり、ライオンはまんまあの3人ですね。ドロシーとマッツはあんまり似てないかも。自分の魅力を利用できる強かさはドロシーにはないなあ。あ、思い切りのいい所は一緒かも。
ザポット市長は西の魔女(東の魔女)かな。シーベルはオズですね。頼りにしていたのに、魔法がインチキなので全然頼りにならないところが。ストーリーでは、初めはバラバラだった欠点のある者同士が団結して一つのことを成し遂げるところが共通してます。それから、ザポットが壁の下敷きになるシーンは、オズの東の魔女が家の下敷きになるシーンのオマージュですね。

生で見る長澤まさみさんはスタイル抜群で可愛かったな〜。彼女が出てくるだけで舞台がパアッと華やぎますね。スカートから地図をばっと取り出す仕草がセクシーでした(*^^*)ナレーションも良かった。そして、なんと言ってもドSが似合う!彼女に命令されたら誰でも言うこと聞いちゃいますよね〜。

塚地さんは舞台が初めてとは思えないほどの安定感。ガッチリとお客さんの笑いを取っていました。仁さんと高橋さんとの掛け合いもばっちり。武田鉄矢のモノマネも良かったなあ。これからも舞台に出ればいいのに。

高橋さんは普段は正反対の役を演じることが多いようですが、純粋で優しい若者をバッチリ演じていました。ポヤーッとした雰囲気の中に少し憂いが感じられるところがいいなあと思いました。

仁さんは冷たい役も似合うんですよね。仁さんがやると完全に嫌な奴には見えないので楽しく見ることができました。ザポットに名前を聞かれて※☆∬‡♥∀と答えるところや警官に怪しまれて挙動不審になる演技はさすがの出来栄えでした。結構ツッコミを細かく入れてましたね。どこまでがアドリブなんだろう。犬のような麒麟のような彫刻も素晴らしかった。

銀さんは圧倒的に上手いし、存在感がありました。過激なザポットとか弱いシーベル、二役の演じ分けも凄かった。彼女の演じるザポットはただの悪役じゃないんすよね。その場しのぎの芸術に感動できる素直さもあるし、息子の死を受け入れられない弱さもある。でも、息子の魂が入ってる肉体が死んでも、他の肉体を探せばいいじゃないと思ってしまえるような合理性を重んじる一面もある。そしてイケメン好き。そんなつかみどころのなさが、この作品に深みを与えていたと思います。

舞台装置と衣装が可愛くて、笑いながら楽しく観て、時々ジーンとして、幸せな気分でおうちに帰れる。
こういう舞台もいいものだな、と思いました。