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金魚繚乱

先日博多でアートアクアリウム展を観てきました。
増税直前の休日ということもあり、会場は大変混み合っていました。
金魚は様々な形の水槽に入れられ、趣向を凝らした見せ方で展示されていました。
私は多分ここで一生分の金魚を見たと思います。金魚の数が半端じゃなかったです。
大きさも立派で、種類も豊富でした。


金魚は中国で発見された突然変異の緋鮒に品種改良を重ねた結果生まれた観賞魚だそうです。人間が愛玩するためだけに生み出された奇形の美。儚い芸術品。


http://instagram.com/p/mVPocuxgiW/
「水中四季絵巻」
プロジェクションマッピングにより映写された四季の風景の中を錦鯉が泳ぎ回っていました。鯉の影が美しくて、映像とよく調和していました。たくさんの人が長いこと足を止めて見入っていましたね。



http://instagram.com/p/mVO2PFxghS/
「花魁」
高さ2.4メートルの巨大な金魚鉢の中に大量の金魚が泳いでいました。
大作ですけど、七色の光にガンガン照らされている水槽に大量に入れられるのって、金魚にとってどうなんでしょう。ストレスが溜まって病気になったり共食いを始めたりするんじゃないかとつい余計なことを考えてしまいました。人間だってこんなことされたら衰弱しますよ。そういえば、どこかの国に女の子を誘拐して水槽に入れて鑑賞していた男が居たらしいですね。余談。

あの悲しい中国のさらに奥・奥・奥・奥・奥……
悲しい金魚が住んでいるという
背びれのないその姿が時の皇帝達にもてはやされ
それがらんちうとなる運命であったのである~*1


はい、お待ちかねのらんちう(蘭鋳)です。

上から見るとこんな感じ。

http://instagram.com/p/mVOgCSxggr/


本当に背びれがない!

頭につぶつぶの瘤がある。

変な形だけど可愛い。

丸っこい体を不器用に動かしながら泳ぐ姿には愛嬌があり、昔の中国の美女が侍女に支えられて纏足でなよなよと歩くような、不思議な色香がありました。はかなく愛らしくグロテスク。時間を忘れて見とれてしまいます。いかにも「らんちう」を作った知久寿焼さんが好みそうな魚です。あの独特の世界観はこの生き物から生まれたのか。 彼は今も課題曲ということで毎回ライブで歌うそうなので、よっぽど思い入れがある曲なのでしょうね。


http://instagram.com/p/mVNc7DRgvg/

四角い水槽と違って、様々な角度から金魚を見られるのがいいですね。正面から見ると、両生類っぽかったです。



金魚が出てくる小説で私が好きなのが、岡本かの子の「金魚撩乱」

岡本かの子 (ちくま日本文学)

岡本かの子 (ちくま日本文学)


岡本かの子は、あの「芸術は爆発だ!」の岡本太郎のお母さんです。大輪の牡丹の花のように華麗で滋味豊かな文章を書く小説家で、歌人でもあります。

私は瀬戸内晴美(寂聴)さんの「かの子撩乱」を読んで、彼女に興味を持ちました。この小説を読むと、私生活も色々と物凄い人だったことが分かります。この母にしてこの息子あり。

「金魚撩乱」は、金魚の美を追い求める男が主人公です。彼は崖邸のお嬢様に鬱屈した恋心を抱き、彼女に似た金魚を作ろうと研究に没頭します。それがだんだん狂気じみたものになっていく展開にぞくぞくさせられるのです。

かの子は金魚について次のように書いています。

ねろりとして、人も無げに、無限をぱくぱく食べて、ふんわり見えて、どこへでも生の重点を都合よくすいすい置き換え、真の意味の逞ましさを知らん顔をして働かして行く、非現実的でありながら「生命」そのものである

この描写は凄まじい。人が金魚に惹きつけられる理由をバシっと言い当てていると思います。

錦絵のように美しく幻想的なラストは圧巻。読みやすい文体で頁数も少ないのでさくっと読めますよ。興味を持たれた方は、是非この妖しく瑞々しい世界を堪能してみてください。

*1:たま「らんちう」の語り(イカ天ヴァージョンより)