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小林賢太郎テレビ6

■ オープニング

小林賢太郎さんによる自己紹介と小林賢太郎テレビの紹介から番組は始まります。 それから、ゲストの松重豊さんの紹介。

視聴者は賢太郎さんが描いた絵を二枚見せられます。一枚目は、少年と変わったスーツを着た男の不思議な絵。手足の関節につなぎ目があって、人間が人形のようにも見えました。絵がテレビ画面に大きく映し出されると、周囲に描かれているものの名称が、字幕で表示されます。

①卵 ②クルミ ③チョコレート ④手乗り文鳥 ⑤ロボット ⑥トランペット ⑦茎しかない植物

一枚目の絵を見て「じょ~うずだね~」と感心する松重さん。その絵が見えなくなり、賢太郎さんにどこに何が書かれていたかを聞かれると、松重さんは「え゛え゛っ?」と困ってしまいます。 「わたしたちは記憶を頼りに生きています。しかし、これほど曖昧なものはありません」と賢太郎さん。

続いて登場した二枚目の絵は、一枚目にそっくり。どこが違うのか全然分かりません。 実は、二枚の絵は同じものでした。その代わり賢太郎さんの服装が、横スクロールで画面が切り替わる度に変わっていたのです。絵に集中していると気付きにくいものですね。 松重さんの顔が現れる向きや位置が変わることで、映像にメリハリが付いていたと思います。

■ クイズ 腑に落ちない

「クイズ 腑に落ちない」というテレビ番組。盛り過ぎのリーゼントで、ピンクの変なスーツを着て、ハイテンションで変な動きをする司会の小林賢太郎。非常に珍しいものを見ることができました。ああいう見た目のキャラクターが出てくる漫画ってありそうだなあ。解答者の竹井亮介さんとの対比でその妙ちきりんさが際立っていました。ていうか、なんで解答者が一人しか居ないんだろう。

非日常の中の日常。このクイズ番組には法則があるのでしょうが、竹井さんにはそれが飲み込めない。それで得点を何グリットも没収されてしまいます。このクイズ番組が腑に落ちないのは、竹井さんや視聴者が持っているクイズ番組のイメージと一致しないから。そのイメージは、記憶の積み重ねで作られます。次回は「お色気ハワイアン大会」だそうです。賢太郎さん、ハワイ好きだな~。

■ 斜めのバーテンダー

カラオケビデオ風のコント。「ライヴ!君の席」の「女心」を思い出しますね。 舞台は中目黒にある斜めのバー。七つの子持ちのマスター(賢太郎さん)に恋する女性客(伊勢佳世さん)。黒沢明ロス・プリモスの「たそがれの銀座」の替え歌で、恋物語が始まります。歌詞はもちろん斜めを使った表現づくし。セットは全て斜めに作られているので、店の前は急な坂道。カウンターにグラスを置くと滑って落ちて割れてしまいます。不便だ。自転車で坂道を下るには便利だけど。マスターの目が斜めになっている時の顔が、「不安の種」のオチョナンさんにそっくりでした。

コーラス隊の「斜っ」がハマり過ぎてて、原曲を聴いてる時にも脳内再生してしまいそうです。コーラス隊の髪型は、ロス・プリモスというより内山田洋とクールファイブの頃の前川清さんっぽい。賢太郎さんの歌い方が妙にねちっこいし、感情を入れ過ぎて音程が上がっていく箇所や何言ってるか分かんない箇所があって、若干スナックで歌ってるカラオケ好きのおっさんテイスト入ってました(笑)あれはわざとだな。

■ くろまき

中学校での三者面談。正確に言うと四者面談。竹井さん教師役が似合うなあ。生徒の黒巻(辻本耕志さん)は黒い忍装束を着ています。教室の後ろには生徒達の書いた習字が貼ってあって、生徒の名前に遊びが見られます。細かい。他の生徒が書いたのは四文字の言葉。それに対して、黒巻が書いたのは「忍」の一文字。ここに黒巻の協調性のなさが表れています。字は一番上手いけど。黒巻が先生から持ち物検査を受けている時、廊下側の窓越しにのものが移動するのが見えて吹き出しました。気が付けば着席している黒巻の両親。母親の赤巻(伊勢さん)は赤い忍装束、父親のグリ巻(賢太郎さん)は緑の忍装束。グリ巻って…(笑)

先生は黒巻がプールで水遁の術を使ったり、授業中に隠れたり豆を食べたりすることを注意するのですが、黒巻にも両親にも何が悪いのか分かりません。先生が黒巻のことを「曲者」と言うと、忍者一家に武器を突きつけられてしまいます。彼等は先生の「曲者」という言葉に反応したのです。

突然の笛の知らせにより、姿を消す両親。忍法チェックシート!先生が目の前のチェックシートをどけると、赤巻の座っていた椅子には消火器、グリ巻の座っていた椅子には盆栽の松が残されていました。黒巻はクロマキーを使って姿を消します。彼等がそこに居たことを覚えていないと、消えたことに気付くことはできません。記憶なしにはこの驚きは味わえないですよね。黒巻の両親が手紙と一緒に置いていった水蜘蛛に興味を示す先生。隠れてそれを見つめる忍者一家。「興味、あるんじゃんね…」と言うグリ巻にうなずく妻と息子。仲良し家族!

その後のアイキャッチには驚かされました。緑のチェックシートを通して見るとただのレゴで作られた建物なのに、赤のチェックシートを通して見ると、建物にKKTVの文字が!

■ 忘れん坊将軍

♪デデデーーン…デ…

♪デデデーーン…デーデッ… 「あっ…」

♪バババーーン… 「ん?」

♪ジャーン!

波をバックに 葵の紋が立ち上がるオープニングで、いきなりジングルを忘れる忘れん坊将軍(賢太郎さん)。

悪代官(竹井さん)と越前屋(辻本さん)が高笑いしていると、忘れん坊将軍とおかよ(伊勢さん)が襖を開けて入ってきます。忘れん坊将軍は、徳田新之助…ではなく奥田新之助という名前で火消しの家に居候していて、おかよに「新さん」と呼ばれています。暴れん坊将軍とほぼ同じ設定です。賢太郎さんは、浪人の格好は似合わなかったけれど、士籍のある武士なら割と似合いますね。今度時代劇をやるならお白洲ものをやって欲しいな。私は「大岡越前」が小学生の頃から大好きなんですよね。

忘れん坊将軍はカッコ良く登場したものの、言いたいことを思い出せずグダグダになってしまいます。「お金をー」と言いながら思い出そうとしているところが可愛かったです。結局、おかよが代官たちの悪事を言うことに。「その方、代官という座にありながら買い占めにより卸値を釣り上げ、御用商人である越前屋と結託し市場を独占することで私腹を肥やし、あまつさえ不正を摘発した善人を手先を用いて亡きものに!」早口の長台詞が大変そうでした。 「ねっ!」と同意を求めるおかよに、忘れん坊将軍は「誰だ?」と訊ねます。 「おかよです!」おかよのことも忘れてしまう忘れん坊将軍なのでした。

伊勢さんのツッコミは、芸人さんのそれとはちょっと違うんですけど、きつ過ぎなくていいツッコミでした。商家の娘の格好もよく似合ってたなあ。伊勢さんの演技が、いつも男だらけの賢太郎さんの世界に合うとは意外でした。伊勢さんの女の子らしさがさっぱりしてるからいいのかな。犬山さんも賢太郎さんの作品の常連のメンバーにはない飄々とした強さを持っています。やはり、生身の女優さんに出てもらった方が化学反応が起きて面白くなりますね。

この後新さんの正体が判明し、悪代官の手下との立ち回りがあるのですが、はっきり言って殺陣が下手くそです。みんな腰が据わってなくて、へっぴり腰なんですよね。一番マシだったのがモンブランズの木多さんかな。忘れん坊将軍は誰と戦っているのかも忘れ、おかよと一緒に帰っていきます。 この後の賢太郎さんのナレーションが本格的で、本物の時代劇みたいでした。

■ お題 タイムマシン

タイムマシンというよりは、ドラえもんのタイムふろしきをトンネル状にした感じかな。でも、アイデアとストーリーと技術が上手く絡み合っていたと思います。 「なんとか氷から水はね~…」と、氷を水に変えるトリックをなかなか思いつかなくても外さなかった賢太郎さん。その執念は見事形になりました。やりたいことを諦めず、しかもちゃんと結果を出してるから凄いよなあ。「実際に手を動かしてみて分かることがある」って言ってましたけど、タイムマシンの中にもう一つグラスを隠しておいて、そちらに氷を入れるというのは、手を動かしながら閃いたアイデアだったんでしょうね。タネが分かってしまっても牛乳や氷のトリックは楽しい。タイムマシンをどける時にもちょっと氷がグラスにぶつかる音がしてましたね。それはご愛嬌。バラバラのレゴが家に変わるトリックはいくら考えても分かりませんでした。タイムマシンを通った手でけん玉を成功させた時の賢太郎さんのホッとした表情がよかったなあ。オチが綺麗だし、手作り感のあるSF(すこし・不思議)コントに仕上がっていました。

■ なぞなぞ庭師

立派な西洋風の屋敷の主人(松重さん)は、朝食を摂っている時にメイド(犬山イヌコさん)に子供の頃に出会ったなぞなぞおじさんの話をします。

「卵。クルミ。チョコレート。どーれだ?」

なぞなぞおじさんに出されたこのなぞなぞを、主人は未だに解けずにいるのです。メイドは屋敷に出入りしている庭師なら知っているのではないかと言います。メイドがなぞなぞ(パンはパンでも…)を出し終わる前に主人に答えられてしまい、ごまかそうとしているところが可愛かったです。

早速主人は庭師に声を掛けてみます。庭師は自分がいつからこの屋敷で働いているのかを知りません。背が高くて痩せているその姿は、なぞなぞおじさんに似ています。主人がなぞなぞおじさんのなぞなぞを知っているか聞くと、庭師は「ああ、はい…」と返事をした後に、あっさり「クルミ」と答えます。その三つの中で唯一「とけない」ものがクルミというわけ。50年来の謎が解けて感動している主人の顔!嬉しいのか悲しいのか苦しいのかよく分からない絶妙な表情でした。

謎が解けて胸にぽっかり穴があいてしまった主人のため、庭師はなぞなぞを出します。

「北海道・本州・四国・九州・日本列島の中で一番長いのはどーれだ?」

仕立て屋にスーツの採寸をしてもらっている時に、主人はその答えが日本列島だと気づきます。庭師に答えを言うと、見事正解。なぞなぞが楽しくなってきた主人は、どんどん庭師になぞなぞを求めます。庭師がトイレに行くときにもついて行くほどのなぞなぞ熱です。 文鳥、ロボット、茎だけの植物…庭師はオープニングの絵に描いてあったものにちなんだなぞなぞを出します。 二人の会話に割り込んで、「毒入りの焼きそばパン!」と答えるメイドがいい味出してました。

主人に「次で最後にするから、お前の知っている一番難しいやつを頼む」と言われ、庭師は「この問題は、出口のない迷路です。耐え切れなくなって途中で逃げ出そうものなら、あなたの人生はきっとひっくり返ってしまうでしょう」と言います。「かまわん。私は迷いたいんだ」との主人の返答を受け、庭師が出したなぞなぞは、「あなたが雇っている庭師は、ここでいつから働いているでしょうか」。いつから庭師を雇っているか思い出せない主人がヒントを求めると、庭師は主人に刈り込み鋏を持たせ、庭の迷路に案内します。考えながら迷路の中を歩いているうちに、これが出口のない問題だと気づく主人。主人には雇った覚えがないのだから、いつから働いているかは庭師にしか答えられないのです。

主人は出口が分からなくなり、怖くなって迷路の植え込みを刈り始めます。そうしているうちに主人の記憶がなくなり、庭師と主人が逆転。これは賢太郎さんと同じく長身の松重さんだからこそ可能なことですね。

元主人の庭師は、元庭師の主人からいつから庭師になったか聞かれても答えられず、「多分、一生分からないよ」と言われてしまいます。元庭師の主人は、注文していた三つ揃いのスーツを着てニヤリと笑います。その柄は青の矢羽根柄。あの絵の男、なぞなぞおじさんの着ていたものと同じです。「だ~~れだ?」

怖い((((;゚Д゚))))なんというか、深夜に一人でいる時に不意に襲われる恐怖と似ているかもしれません。メイドや仕立て屋は、主人が入れ替わったことに気付かなかったんでしょうかね。出口のない謎の追求が、いつしか自分との鬼ごっこへと変わり、元主人は自分を見失ってしまいました。元主人は、記憶を喪失したと同時に自己もなくしてしまったわけです。なんとなく、安部公房の「燃えつきた地図」や「箱男」を思い出してしまいます。

元庭師は50年前に出会った少年の屋敷に計画的に庭師として潜り込んだのでしょうか。それともたまたまあの屋敷で働くことになり、働いているうちに主人と入れ替わりたいという欲が芽生えたのでしょうか。いずれにせよ主人の座を乗っ取ったというところに底知れぬ暗さを感じてしまいます。

乾いた水を飲まされて のどがカラカラになっても 君を間違えて飲み込んだりしませんように*1

元庭師は元主人を飲み込んでしまったのかしら…。

私たちは自分の記憶の連続性によってアイデンティティを保っていられるわけですけど、番組の中でも言われていたように、記憶というものは曖昧なもの。自分が誰だか分からなくなれば、私も自分以外の誰かになれてしまう。仮の自分のまま生きたり、誰かに成りすましたり……って考えてたら気持ち悪くなってしまって、今まで見てきたコントが全て違った色に見えてきました。黒巻は本当にあの中学校の生徒なのか、とか疑い始めたらキリがない。忘れん坊将軍とか、馬鹿馬鹿しさで笑わせるコントなんですけど、忘れん坊将軍の感覚がどんなものか想像してみるとゾッとしてしまいます。

■ エンディング

オープニングで賢太郎さんの服装がどのくらい変わったかの答え合わせがありました。1回変わったのかと思ったら、なんと2回。しかも何箇所も変わっていました。人間の記憶って曖昧だなあ。 いきなり出てきたグリ巻に爆笑。「どこがどう変わったでしょーうか」…って変わり過ぎだろ! グリ巻が忍法チェックシートでドロンと消えて <終>

今回はやはり松重豊さんの存在が大きかったですね。彼が画面に映っているだけでそこに一つの世界が成立して、ウケるために特別なことをやらなくても面白くなってました。彼の存在は賢太郎さんに多くの刺激を与えていたと思います。

小林賢太郎テレビももう6回目。賢太郎さんもテレビというメディアの扱い方に慣れたのか、バラエティ豊かで完成度の高い番組に仕上がっていました。しかし、その分今までのKKTVに比べて隙がないという印象。 来年もKKTVが行われるとしたら、どんなふうになるのかなあ。

*1:たま「月のひざし」