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組み合わせの技法

最近の賢太郎さんの写真に写りこんだり、KKTV6に登場したりしているレゴ。丸い突起の付いた小さなパーツを組み合わせて遊ぶ有名な玩具です。乗り物、建物、動物、植物…組み合わせ次第で作ることのできるものは無限にあります。しかし、3Dプリンターのように形をそっくりそのまま再現することはできません。パーツの直線の部分や丸い突起が完全な再現を不可能にしているからです。だからこそ、作り手は工夫を凝らします。作りたいものの特徴をどう捉えるか、パーツを何に見立てるかによって作り手の個性が出ます。組み合わせ次第では、できたものが本物以上に本物になることだってあり得るのです。もちろん、何かを再現するだけではなく、新しい動物や機械のデザインを自分で考えて作るという遊び方もできます。そういうところが、いかにも賢太郎さんが好きそうな感じですね。

さて、今回のKKP「ノケモノノケモノ」には、組み合わせで作られたものが登場します(レゴじゃないですよ)。登場人物や立体の舞台装置とともに作品の世界観を構成する上で欠かせないものです。

それを見ていて思い出したのが、チェコアニメーションの巨匠、ヤン・シュヴァンクマイエル監督。彼はコラージュの天才です。絵、石、植物、金属、粘土、食べ物、引き出し、肉、骨、目玉…一つ一つは何の変哲もないパーツを、監督は組み合わせであのおぞましくもユーモラスな独特の作品に変身させてしまいます。動かし方、見せ方がまた素晴らしくて、生きていないものでさえも生命を持っているように見せてしまう技はさながら錬金術のようです。そして、映像の隅々にまで監督の触覚へのフェティシズムが行き渡っています。グロテスクで訳の分からない映像に目で触れているうちに、固定観念で凝り固まった脳がだんだんとほぐれていくのを感じます。

また、彼は大学の人形劇科を卒業後に国立人形劇劇場で演出と舞台美術を担当していたので、初期の作品には人形劇の映画がありますし、人形を使わない映画にも切り絵の動かし方やセットに人形っぽさ、舞台っぽさが伺えるものがあります。

シュヴァンクマイエル監督の作品の中で、私が賢太郎さんが影響を受けている要素がギュッと凝縮していると思うのは、短編の「エトセトラ」。

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でも、やり方は似ていても別物です。シュヴァンクマイエル監督の作品は視覚や聴覚への刺激が強すぎる分、賢太郎さんの作品にはある情緒がないです。賢太郎さんの広大で正体不明の暗さとシュヴァンクマイエル監督の練り固めた煤混じりの脂を地下室に置いておいたような暗さは違いますし、創作意欲の源となっているものもきっと違うと思います。

先日、TSUTAYAで借りてきたドキュメンタリー映画で観た監督は、可愛らしいおじいちゃんでした。痩せていて表情や仕草がが子供のようで、声や話し方も可愛いのです。

奥さんのエヴァさんとエロティックなオブジェの前で仲良く話している光景は微笑ましいものでしたが、作品について語っている時にふいに眼光炯々たる目になることがありました。流石シュルレアリスムの闘士。長年社会主義の政府の検閲や弾圧に負けずに自分の作りたいものを作り続けてきた人だ。そして、今もその情熱は衰えていない。その見た目とは裏腹にタフな人です。タフでなければここまでやってこられませんって。国が社会主義でなくても彼のアニメーション制作は大変です。なにしろ気が狂いそうなほど手間がかかるのですから(CGを一切使わないのです)。

この映画には主に「オテサーネク」のメイキングが収録されています。「オテサーネク」でこれでもかと見せつけられる食欲と保護欲。母親役の女優さんの狂いっぷりにも注目。ただ、妊娠中の方は観ない方がいいかも。ラース・フォン・トリアー監督の「アンチクライスト」よりはずっと後味がいいですけどね。浦沢直樹先生の「MONSTER」はオテサーネクの影響を受けてるのかな。「アリス」に使われた舞台装置や人形も監督夫妻が共同で開いた展覧会にちょっと出てきますよ。