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ビルのゲーツ

先月、ヨーロッパ企画の「ビルのゲーツ」を観てきたので、その感想を。


世界的IT企業の巨大ビルに、ベンチャー企業の5人の社員(加藤さん、石田さん、諏訪さん、土佐さん、金丸さん)は招かれます。招いたのは、そのIT企業のCEO。


受付で手続きを済ませ、覚悟を決めて大きなゲートをIDカードをかざして開ける加藤と、緊張しながらゲートの前に立つ残りの4人。しかし、開いたゲートの先にCEOの姿はなく、2階へ続く階段があるだけ。5人はCEOに会うために、クイズを解いてゲートを開けながら上を目指すことにします。


クイズ自体は問題をよく読んで考えれば解ける程度のものでしたよ、最初のうちは。私は途中でめんどくさくなって、解くのをやめてしまったんですよね。問題文が英語で書かれていたのは、観客が簡単に読めないようにするための工夫でしょうか。上の階に行けば行くほど問題は難しくなっていくし、頭脳だけでなく、運動能力やチームプレイも必要になってきます。


ゴールは何階なのか、何のために登らされるのか。巨大ビル側からの説明は、一切なし。一方的に与えられる理不尽な試練に耐える訪問者と巨大ビルの関係が、就活中の学生と企業、または下請け企業と大企業の関係を彷彿とさせます。


彼らが知恵を出し合ってビルを上っていく様子が、古いダンジョンゲームのようで、観ていてワクワクしました。下の階の道具を使ったり、Yes/Noガール(西村さん)にクイズ以外のことを質問して仲良くなって巨大ビルの情報を聞き出したり。こちらの決めつけ、思い込みをひっくり返すような発想が素晴らしかったです。これが集合知ですね。


やがて、他社の社員(作業用上着を着用:岡嶋さん、永野さん)(新進気鋭のIT企業:中川さん、酒井さん)(猛獣の出る階から逃げてきた:吉川さん、本田さん)が現れ、会社の生き残りを賭けての争いが始まります。しかし、やがて彼らはみんなで協力しながら上っていく方が合理的だと気付きます。


奪い合いから協力へ。これは、利益に限りのある今の世の中で生き残るための一つの方法だと思いました。また、私には一人でやるオフラインゲームから多数のユーザーが協力して戦うオンラインゲームへ、というゲームの変遷とも重なって見えました。


猛獣や蜂の居る危険な階を突破してからは、あらゆる所から離脱ボタンが次々と現れるようになります(スクリーンに映る数々の訪問者の写真で表現。ちょっとボラギノールのCMみたい)。ボタンを押したら、即1階へ直行!巨大ビルの何者かは、訪問者の家族や同僚そっくりのロボット(離脱ボタン搭載)を登場させてまで、訪問者を離脱させようとしてきます。きたない。そして、しつこい。ここで脱落者がわんさか出ます。


そんなこんなで、ただ一人最上階(R)まで辿り着いたベンチャー企業の新人金丸。
彼は屋上で夕焼けをしばらく見つめ、それから軽い足取りで来た道を戻っていきます。
あれだけ苦労して、多くの人間を犠牲にして、辿り着いた先には何にもないなんて…。登りきったから一応達成感はあるんですけどね。屋上の夕焼けのもの悲しさよ。。


結局、この巨大ビルの社員もCEOも存在しなかったんでしょうか。人が居なくてもシステムだけは生きていて、それが自動的に他社の社員を呼んだり、派遣社員に仕事をさせたりしていたということなのかなあ。コンピューターに仕事を取られた社会の末路ってこんな感じかしら。人間がコンピューターにすることを与えてもらうっていう…。


この作品のラストは、「登り終えたらまた次があるさ」と前向きに捉えたらいいのかなあ。少なくとも、閉塞的な空間の外を見ることができたのは収穫だったのかもしれません。


しかしまあ、一つのシチュエーションをよくぞここまで膨らませ、展開させられるものだなあ。笑ったりドキドキハラハラしたりしながら、最後までダレることなく観られました。一つの舞台に同時に最大11人立っていてもキャラが被らないし、ちゃんと全員に見せ場があるのも凄い。

私のお気に入りはYes/Noガールです。ピンクの衣装を着てはにかむ姿が可愛らしかったなあ(*´艸`)一番悲しいのは、片目を失明して最後のゲートを開けられなかったお爺さん(角田さん)だな(数字に従って番号の振ってあるリーダーにIDカードをかざすとゲートが開く。その数字を象形文字っぽい絵の中から浮かび上がらせるためには、両目が見えないと駄目)。彼はあのままあそこに居続けるのでしょうか。