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Throwing a Spoon 'awakening' release tour

1月29日にトウヤマタケオさんと徳澤青弦さんのデュオ、Throwing a Spoon のライブを聴きに行ってきました。
場所はアクロス円形ホール。その名の通り、まん丸なホールです。客席の椅子が半円を描くように並べられ、中央にステージが配置されていました。

椅子に腰掛けて待っていると、上手のドアからトウヤマさんと徳澤さんが登場。お二人は照れくさそうにデュオ名の「Throwing a Spoon」を口にしてました。人前でこう名乗るのは初めてなんだそうです。

そして、おもむろに演奏が始まります。全曲アンプを通さない生音での演奏でした。小さなホールでの演奏だったので、ピアノのペダルを踏む音や、椅子の軋みや、弦の小さなノイズもはっきり聞こえました。

「clouds」
ピアノとチェロの音色が空気に滲んで溶けていくのを聴いていると、私も一緒に溶けて混ざっていくような錯覚に襲われました。
「Hectopascal」
半音の音程差の二つの音の組み合わせから構成されるメロディ。これがだんだん変化していきます。聴く者を落ち着かせない不安定な音の高低差。聴いていて揺れている飛行機に乗っているような気分になりました。

今回のライブでは演奏後に必ず曲紹介がありました。「僕らの曲には気圧の曲が多いですね」と話す徳澤さん。「気圧の変化で演奏も変わりますね。福岡は暑いので演奏もそんな感じになります」とトウヤマさん。

「old tales」「E.V.A」 「Hello Bricks」の三曲は境目なく続けて演奏されました。
「old takes」
ラーメンズの曲。チェロのピチカートが聴こえ始めると、嬉しくてついニヤニヤしてしまいました。
「E.V.A」
曲名の由来は何なんでしょうね。エヴァンゲリオンかしら。鼓動のようなピアノに重なったチェロのかすれたうなりは、音量は大きくないのに圧倒的な存在感を放っていました。
「Hello Bricks」
ドラマチックな曲でした。映画の1シーンに使えそう。
この曲はもともとはトウヤマさんが昔作ったアルバムに入っていた曲なんだそうです。それをThrowing a Spoonでも演奏し、新しいアルバム「awakening」に収録したと説明しようとする徳澤さん。「リ」で始まる言葉を一生懸命探し、最後に思いついた言葉が「リアップ」。トウヤマさんからツッコミが入ってました。

「クェイシーの水泳」
この曲は前回も演奏されましたね。やっと曲名が分かりました(ノД`)・゜Xの悲劇の登場人物であったとは。読んだことないから分かんなかったなあ。。チェロの音が広い川の水面に浮かんでは沈むクェイシーの頭のようで、静かではありますがどことなくユーモラスで大好きです。

いろんな所で二人でライブをやったけど、こんな格調高い所で演奏するのは初めてと徳澤さんは言っていました。生音で演奏するのも久しぶりなんだそうです。緊張するような曲はやらないけどと話す徳澤さんに、俺は大変なんだよとツッコミを入れていました。その理由は後半になって分かりました。

トウヤマさんと徳澤さんの演奏は、前回と同じく譜面通りと即興の中間くらいでした。終わり方もはっきりと決まってなくて、キリのいいところでやめるという感じなので、前半の演奏が予定より長引いてしまったと話していました。レコーディングのためにスタジオにこもっていた時も、集中して弾いていたらものすごく時間が経っていたことがあったそうです。

休憩を挟んでトウヤマさんのソロが二曲。その間、徳澤さんは客席の端っこに座ってそれを聴いていました。
「Der Meteor」
妖しい魔法のような曲。大きな流れ星をピアノの一音一音で点描のように繊細に描いているような曲なので、トウヤマさんの指使いを堪能できました。
「気取り屋と野暮天」
ピアノの練習曲のような雰囲気。温かみのある優しい曲。技巧的にはそんなに難しくないけれど、転がるようなピアノの音が心地よかったです。楽譜が売っていれば、買って弾いてみたいなあ。

徳澤さんが戻ってきて、再びお二人での演奏が始まります。
「Ranchiu」
色彩豊かな曲です。お二人共水や空気の表現に長けていらっしゃるなあとつくづく思います。トウヤマさんはグランドピアノの弦に白いガムテープをビッと貼って、音質を変えて演奏してました。この曲は前回も演奏されましたが、その時はプリペアードピアノでの演奏ではなかったと思います。前回のライブ会場にあったのはアップライトのピアノでしたから。ガムテープを貼ってペダルを踏みっぱなしのピアノの音は、平べったくてプカプカした可愛らしい音でした。
「Sofia」
5拍子の民族音楽風の音楽。クセになるメロディです。トウヤマさんの歌声が耳に残って離れません。

「Sofia」の曲名は上智からではなく、ブルガリアの首都から付けたのだそうです。しかしトウヤマさんは、ブルガリアの具体的なイメージから作ったわけではないそうです。強いて言うなら、大阪の小さな映画館で「ソフィアの夜明け」という映画を観たことがあって、そのイメージかもしれないと言っていました。ブルガリアといえばブルガリアンボイス。「あの声は凄い」「多分こんな所で歌ったら、聴いてる人の耳がおかしくなるよね」「ねー。イメージだけど」という感じで盛り上がるお二人。徳澤さんのブルガリアのイメージはヨーグルトだそうです。「すいません、ベタで」と徳澤さん。私もヨーグルトくらいしか思いつきません。琴欧洲ってブルガリア出身だったかな…。

「Dancer's Awakening」
聴いていて醒めて欲しくない夢を見ているような気持ちになりました。徳澤さんのチェロの歌いっぷりが素晴らしかったです。
「名もつかぬ銅像」
不思議な曲です。自分が知りもしなければ失ってもいないことを切なく振り返るような、匿名の懐かしさがありますね。

トウヤマさんは、徳澤さんが昨年の年末に紅白に出たことを教えてくれました。テレビで紅白を観ていたら知り合いが出ていたので、俄然テンションが上がったとのこと。徳澤さんはどうしても断りきれない先輩に頼まれて、進撃の巨人のバックを務めることになったそうな。知らなかったなあ。紅白真面目に観ておけばよかった…。徳澤さん曰く、紅白はその年の最高の人材を集めて行うので、とてもクオリティが高く、秒単位できっちり進行するそうです。でも、NHKホールの音響は#$%&…とのこと。それから、ふなっしーはテレビに映っていない時でもふなっしーで、テンションが高かったそうです。ふなっしー偉い!(・∀・)

アンコールは「tsu gi hug e」。この曲を聴くといつもやるせない気持ちになりますね。ヒリヒリした音に心を押さえつけられるのです。

レコーディングは山小屋のようなスタジオで行われ、その際に窓を開けていたので、鳥の声や車の音や芝刈り機の音などが入ってきたそうです。お二人が人から指摘されて気づいたのが、バキバキバキ…という音。これは、スタジオに使われている木材が寒暖の差で膨張したり収縮したりして割れた音なんだとか。

アルバムが完成し、徳澤さんは「もう死んでもいい」、トウヤマさんは「もうちょっと生きたい。俺は欲深いので」と言っていました。性格が出ている発言ですね。お二人とも今回のアルバムの出来に大変満足しているようでした。ニコニコしながら語ってましたもの。私も本当にいいアルバムだと思います。音が心地よくていつまでも聴いていられます。収録されている曲もバラエティ豊かで飽きが来ません。天気のいい日に、窓を開け放して寝そべりながらゆるゆると聴くと最高ですね。

ライブが終わってアクロスを出ると、外の空気はひんやりしていましたが、冷たい風が頬に当たっても平気でした。身体中にライブの振動を残し、気分が高揚した状態で家路に就きました。

awakening

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